「私の昭和歌謡レコード史」(2)
今回は波乱万丈の劇的な歌手人生を送った愛称「おミズ」と呼ばれた「水原 弘」を取り上げてみたい。 彼は1957年「ダニー飯田とパラダイスキング」の初代ヴォーカリストとして参加したが翌年には脱退し新たに「水原 弘とブルーソックス」を結成し専属シンガーに森山加代子やジェリー・藤尾も加わっている。 その後、彼が大ブレークしたのは1959年(昭和34年)「黒い花びら」でのレコード・デビューであった。 この「黒い花びら」、B面にカップリングされた「青春を賭けろ」― 東宝映画タイトルの挿入歌だったがジャケットには「主題歌」と表記されている。 両曲共に「永 六輔」作詞「中村八大」作曲・編曲でこのコンビによる最初期の作品だった。 このシングル盤の売り上げも当初の予測に反して累計100万枚を超えたとも云われている。 そしてこの年から始まった第1回「日本レコード大賞」も受賞した(写真1 水原 弘「黒い花びら」シングル・ジャケット、東芝JP-1070 ・1959年モノラル盤 / 写真 同・レーベル面)。
その後の彼は各社の映画出演依頼も増え数多くの人気俳優たちとの共演もこなし歌手と俳優の両道でファンの人気も得たが日常的に酒に呑まれ多額な借金も抱え不遇な時代を送ることになる。 絶望的と見られた彼に奇跡が起きたのは1967年2月リリースのシングル「君こそわが命」(川内康範 作詞 ・猪俣公章 作曲編曲) であった。 これはビクターの「佳川(かがわ)ヨコ」との競作だったがレコードの売上はやはり「水原盤」が圧倒的だった。 このヒットにより彼は5年ぶり4回目の「NHK紅白」出場、「第9回日本レコード大賞‐歌唱賞」を受賞している。 まさに「奇跡のカムバック」と称された(写真3 水原 弘「君こそわが命」シングル・ジャケット、 東芝TP-1390 ステレオ盤 / 写真4 同・レーベル面)。
(つづく)