6月15日、関東地方は大雨だった。 雨の中、私は数十年ぶりに秋田から上京した友人と「東京湾クルーズ」を楽しんだ。 実はこの日、私が所属する「龍ヶ崎ゲヴァントハウス」で、大切な講演会があった。 米国クリーブランド管弦楽団のヴァイオリン奏者である白上冴さんによる『名門楽団員が語る「音楽と指揮者とオーケストラ」』である。
白上さんは年1回、稲敷市あずま生涯センターでボランティアのコンサートを開いている。 2018年のコンサートを聴いて感激した。 ぜひ聞きたかった。
ありがたいことに、龍ヶ崎ゲヴァントハウスの講演会は終了後、直ぐに同会のホーム頁にアップされる。 講演会は雨にもかかわらず、多勢の方々が参加され大盛況だったとある。 講演には白上さんが共演した世界的に著名な指揮者、奏者が登場する。
その中で内田光子さんとの共演の模様が印象に残った。
『つい最近、彼女がきて(クリーブランド管弦楽団)、バルトークの3番、難しい曲をやった時に指揮者が早いテンポで進めるためフレンチホルンが遅れるとか指揮者がいっていたのですが、光子さんはその部分はもう少し遅くいきたかった様で、しかしそれを言ってしまうと指揮者の立場もなくなるので「私のテンポが遅いのね」と言い「ここはピアノの音が沢山あって大変なのよ」と言って団員を笑わせ、指揮者にもメンツをたてながらテンポを落とさせていました。 彼女の自分を卑下してユーモアで笑いを取って、さりげなく自分の主張を取り入れさせる手腕は素晴らしいと思いました。』
僭越だが、私は内田光子さんにお目にかかったことがある。 1972年頃である。新開発のテープを持参して聴いていただいた。 「面白い音ね。 跳ねるよう」。 このテープは高域寄りでどうかと思ったが、内田さんの感想もとりいれ、高音に特徴があることをセールスポイントにして発売に踏み切った。
(上、白上冴さん”酒井文彦氏撮影2019” 下、内田光子さん”木之下晃氏撮影1980)