"kazu"のひとりごと(SPレコード雑感6)

情操教育

日本人は「お上」を信頼する国民性があると思います。 「文部省推薦」などと赤い文字で謳われていれば、高価なレコード購入の指針とするのでしょうね。

「高価」と言いましたがレコードは本当に高価なものでした。 現在の様に数十円、数百円単位で(あるいは無料で!)聞きたい曲が手に入る時代しか知らない人には給料の半分の代価を払わなければSPレコードを手に入れることが出来なかった時代があったなんて信じられない、想像も出来ないでしょう。 そういう言う私もそんな高価だった時代には生まれていませんでしたので、分かった様に言うのは恥ずかしいのですが、先人達は音楽を聴くために経済的にも、労力的にも現在とは比べものにならないほどの苦労と情熱を掛けていたのだと頭が下がる思いです。

それでも子供達や後に続く人のために高価なレコードを買い聞かせてくれた先人達のおかげで、今日があるのだと思います。

もちろん、先人達もご自身が音楽を愛していたからこそそんな高価なものを買ったのだと思いますが、そうした心の伝承がSPレコードを通じて行われた事で後に続く人達がまた次世代に心の伝承をして行ったのではないでしょうか。

昔はそんな大先輩たちが大勢いてくださった様に思います。 翻って今、私達はそんな大先輩達の後継者として生きているのかと大げさかもしれませんが思います。

そして自身も含めて生きていないのではないかと思う時があります。

「文部省推薦」と書かれた10インチ盤を買い私達に音楽を聞かせてくれた、父母や先輩方や教育に携わった方々の尽きせぬ恩義を忘れた愚かな私達がいるだけではないかと思うのです。

たかがSPレコードと言われるかもしれませんが、ふと、そんな事などをSPレコードを聴きながら考えました。