nobuさんのひとりごと(「ゲヴァントハウス」結成40年 その歴史をたどる)
NPO法人「龍ケ崎ゲヴァントハウス」の前身、音楽愛好会「ゲヴァントハウス」が結成されたのは、1982年2月のことでした(ソニーが世界初のCDプレーヤーCDP101を発売した年)。 2022年2月で40年が経ち、『東ドイツの名門「ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団」のような独自のカラーを持ち、歴史を作れるような 愛好会であり続けたい』という願いから命名されたこの団体は、充分な歴史を築いて来たように思います。
最初の2年間は、「イギリス音楽特集」、「ロシア音楽特集」、「ブラームス生誕150年を記念して」等々、現在行っているようなテーマを設けての月1回の鑑賞会でした。 しばらくの間は電気店を営む前理事長kuniさんの店舗内にあるオーディオ・スペースが会場となっていました。 地元情報誌に募集を掛けたり、友人への声かけ、雑誌の情報ページなどでメンバーは増えていきましたが、もう25年の付き合いとなるメンバーのひとりShimi=Kinさんとの出会いといえば、JR電車内でクラシックCDを手にする姿を目撃、声を掛けたのが切っ掛けでした。 こんな偶然が引き寄せた出会いもありました。
旧ゲヴァントハウスで中心的に行っていたのが、「名曲聴きくらべ」で、それは1984年2月からスタートし、2005年2月まで続きました。 一名曲の同じ箇所を数種類、あるいは数十種類の演奏で聴き比べ、採点するというもので、10点満点で採点、演奏者を隠したブラインドによって行われました。 先入観を持たないフラットな聴き方は効果絶大で、予想外の興味深い結果をもたらし、結果発表ではさまざまな意見が交わされました。 例えば、ベートーヴェンの交響曲第5番は11種類、8人のメンバーで採点、結果は第1位がクレンペラー&ウィーン・フィルによる1968年のライヴ盤、最下位がなんと、世評高いクライバー&ウィーン・フィルによるグラモフォン盤、という具合でした。 これが「聴きくらべ」の面白さでもあり、醍醐味です。
2006年の夏、大きな転機が訪れました。 メンバーのひとりmizuさんの設計制作によるオーディオ装置の実験的な研究の場として、竜ヶ崎ショッピングセンター・リブラ2階の使わなくなった「旧映画館」が自由に使えることとなり、ここでお客様を入れた「CDコンサート」を開催したらどうか、という事になったのです。 しかし最初の音出しは酷いものでした。 何度も何度も思考錯誤を重ね、やっと納得出来る音になった頃、「CDコンサート」がスタートしました。 使用ソースはライヴ音源が豊富に揃っている事に加え、ライヴ好きの私がプログラムを担当する事になったため、埋もれたライヴの名演奏を紹介するという目的で、FMやBSで録りためたライヴ音源が中心となりました。 スタートから1年半位は毎週開催というハードなスケジュールでしたが、その後月3回、最終的には月2回に落ち着きました。
新聞や情報誌で紹介された事で、さまざまな方が会場を訪れました。 現会員の半数以上はそうした人達です。 新聞でゲヴァントハウスの存在を知ったというhatakeshunさんは、会員に加わってもらうと、元TDKに勤務していたそのパイプの広さを遺憾なく発揮、その後定期化して行く、講師を招いての「特別講演会」のゲストを次々と招聘しました。 第1回は当時、振興レーベルとして注目を集めていたAltusの齋藤啓介氏、その後もNHK音楽番組サウンドエンジニアの辻本廉氏、元FM東京音楽プロデューサー・ディレクターで現在は音楽評論家として活躍されている東条碩夫氏、サントリーホール・エグゼクティブ・プロデューサーで音楽ジャーナリストとしても活躍、カラヤンの秘書を努めた事でも知られる眞鍋圭子さん来龍時は満席の盛況ぶりでした。 音楽、オーディオ界から多数の著名な講師の方々にお越しいただきましたが、元フィリップスレコード・オランダ本社副社長で、現在はオーディオ研究家として活躍されている新忠篤氏から、会場のオーディオ装置の音を高く評価された事は、大きな自信となりました。 新さんには通算7回お越しいただいています。 その後、多くの講師の方々から賛辞の言葉をいただき、mizuさんの「コンサートホールを超える程の感動的な音」へのあくなき挑戦は、さらに続いて行きました。 「街のコンサートホール」の音がこれ以上ない高みまで登り詰めた頃、ショッピングセンター・リブラの閉館が決定、2020年1月「街のコンサートホール」は幕を下ろしました。 この素晴らしい空間は二度と戻ってこないと思った時の寂しさと虚無感は、ずっと心の中に残っています。
2020年3月からは、会場を龍ヶ崎市市民活動センターに移しました。 毎回2ヶ月前に市民活動センターに出向いて先着順に予約を取る必要があるため、取れなかった場合は開催日の変更を余儀なくされ、ステレオシステムも「リブラ」の時のように常設では置けないため、移動できるシステムの小型化が必須となりました。 幸い、mizuさん設計制作のクリーン電源やDAコンバーター、fumiさん製作の真空管式レベルコントローラーで2台のメインアンプをバイアンプ駆動した上、スピーカーに超高音と超低音を追加するなど、音質調整を重ねた結果、小型システムとは思えない程豊かな音を実現させました(新会場でのオーディオ装置)。
2013年5月28日茨城県より「特定非営利活動法人(NPO法人)”龍ヶ崎ゲヴァントハウス”」として設立認定を受け再スタート。 2013年12月にはクリーヴランド管弦楽団在籍のヴァイオリニスト白上冴さんのリサイタルを企画・開催。 録音・CD制作まで行いました。 録音・編集に関しては、講師としても3度お越しいただいた元ユニバーサル・ミュージック録音部の常盤清氏が引き受けて下さいました。 2019年には(株)キング・インターナショナルがCD制作を行ったカラヤン指揮ベルリン・フィル1966年来日公演の音源提供を行いました。 これは放送録音の膨大な資産を有する当会ならではの大きな出来事となりました。 ホームページはfumiさんが管理運営を担当するようになってアクセス数が急増、カラヤニストさんの「コンサート漫遊記」が毎日更新されるのも、これに一役買っていると思います。
新型コロナ・ウィルスの影響で、ここ2年は「オリジナルCDコンサート」の延期や講演会の中止が相次ぎ、予定通りの活動が出来ない状況が続いています。 残念な事です。 しかし今後もクラシック音楽の名曲・名演奏を多くの皆様にご提供したいと思っています。 「ゲヴァントハウス」の歴史は、まだまだ続いて行きます。(nobu)