TORUのひとりごと(ヴォーン・ウィリアムズ生誕150周年)

昨年2022年は、ヴォーン・ウィリアムズ生誕150周年の節目の年。

国内外の音楽シーンでは、めったにコンサート・プログラムに載らない交響曲が聴けたり、国内初とも言うべき、彼の「伝記本」が翻訳・出版されるなど、結構いろんな動きがありました。

実際に聴いたコンサートは、次の3公演。 感想を述べたいと思います。

①2021年9月11日  ミューザ川崎

原田慶太楼 指揮 東京交響楽団 東響コーラス

(曲目)オール ヴォーン・ウィリアムズ プログラム

・グリーンスリーヴスによる幻想曲

・イギリス民謡組曲(ジェイコブ編)

・海の交響曲(交響曲第1番)➡ ソリスト 小林沙羅(ソプラノ) 大西宇宙(たかおき)バリトン

原田慶太楼の、並々ならぬ意気込みを感じた。 曲の前半の楽章と、後半の楽章とで、コーラス隊を入れ替え、コロナ対策にも充分配慮。 いまもっとも注目されている二人のソリストによる魂のこもった歌唱。 パイプオルガンが時に優しく、時に荘厳な響きで全曲を貫き、最後まで緊張感を切らす事はなかった。 編成からすると、マーラーの「復活」を思い浮かべて欲しい。とにかくスケールが大きな曲で、ナマ体験を一度は味わって頂きたい。

②2022年11月23日(水)サントリーホール

レナード・スラットキン指揮 NHK交響楽団

・ヴォーン・ウィリアムズ 「富める人とラザロ」による5つの異版

・メンデルスゾーン Vn協奏曲(Vn)レイ・チェン

・ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第5番ニ長調

5番は、同楽団のプレヴィンとの1999年5月の公演を聴いて以来、実に24年ぶり。 ヴォーン・ウィリアムズの「いちファン」としては、待ち望んでいた瞬間。 スラットキンが、インタビューで、子供の時ラジオから流れる「今までにないクラシック」の響きが脳裏に刻まれたらしい。 私が大好きな3楽章「ロマンツァ」を、ここまで慎ましさを持って奏でられる演奏家に、そう巡り会えるものではない。 また、忘れてならないのは、コンサート冒頭を飾った「富める人とラザロ」による5つの異版(ヴァリアント)。 これが日本初演ではないか。 ステージ中央には2台のハープを配し、それを弦楽セクションが取り巻く格好。 ヴォーン・ウィリアムズの真骨頂とも言うべき、イギリス各地域に及ぶ「民謡採集の成果」が見事に反映された1曲。

このコンサートの帰り道、偶然見つけた公演ポスターに目がとまり、即日チケット購入したのが、

③2022年12月9日(金)

サントリーホール

下野竜也 指揮 日本フィル 近現代イギリス作品集

プログラムは、フィンジ「入祭唄」、タネジ「3人の叫ぶ教皇」、フィンジ「武器よさらば」テノール(糸賀修平)、ヴォーン=ウィリアムズ 交響曲第6番ホ短調

下野竜也がヴォーン・ウィリアムズに惹かれ始めたらしく、今後に期待したいところ。 めったに演奏されない6番を取り上げたのもすごいが、演奏も力強いものだった。

終演後、スラットキンと下野が鳴り止まない拍手に応え、取った行動が偶然にも同じ。
スコアを正面に高く掲げ、

「曲が素晴らしかったからですよ!」。