"TORU"のひとりごと(~ わが心の拠り所~ 冨田勲、そしてヴォーン=ウィリアムズ①)

~ わが心の拠り所 ~ 冨田勲、そしてヴォーン・ウィリアムズ①

「新日本紀行」と言うNHKの看板番組を、ある程度年輩の方なら知らない人はいないでしょう。 日本情緒溢れるテーマ音楽を書いたのが、冨田勲。 「日本人に生まれて本当に良かった」と思わせてくれる、貴重な作曲家の一人だったのですが…。 惜しまれつつ、2016年に他界されました。 84歳でした。 代表作の手塚アニメ「ジャングル大帝」、円谷プロの「マイティ・ジャック」などで少年のハートを鷲掴みにし、物心ついた頃には、NHK大河ドラマの重厚な音楽で、またもや我々視聴者をブラウン管に釘付けに…。 中でも「勝海舟」は、最もスリリングな劇音楽で、テーマ曲を含め、今でも大好きな作品。 楽器編成としてはかなり大胆。 歌詞を持たない男声合唱や、パイプオルガン(多分)まで加わります。 「ジャカジャジーャン」の合図と同時に和太鼓とピアノのオスティナート楽句。 このリズムがクラシックでは殆ど使われないリズム。 メロディーは、主に弦楽器+男声合唱。上昇下降を経、大胆な転調後、ホルンを中心に金管が大見得を切ると、ティンパニのクレッシェンドがバックを支え、興奮を鎮める様に小編成に代わった弦楽器が(ビオラが主導?)最後の締めを担当。 持っているNHKサウンド・トラックCDを聴くたびに、咸臨丸が大海原を渡り、波が砕け散るシーンが甦り、心が熱くなります(この展開が、わずか5分弱のテーマ音楽に見事に凝縮されている事実に驚嘆!)。 実はもう一曲、彼の曲で私の胸の奥に大切にしまってある曲があります。 音源が、過去に一度も陽の目を見ず存在すら忘れられている「新太閤記」。 先程と違い、民放による時代劇で、オンエアの年代は「勝海舟」とほぼ変わらずと記憶。 頭の中の冨田勲1位・2位は、この2曲がいつも順位争いをしています。 どんな曲かと言うと、先程の歌詞を持たない男声合唱が、城郭をバックに勇壮なメロディーを歌い上げ、金管のコラールに他の全楽器による間(あい)の手が入るそんな記憶…。 冨田,節'とも言えるダイナミックなメロディーが一度聴いたら忘れられない、日本人の郷愁を誘う何かが込められている曲なのです。 再放送らしい放送も、無かったせいで、曲の存在すら忘れかけようとしていた時期もありました。 何しろ、40年以上前の話ですからね。
ところが、ある時ふと気付いたのです。 全く別の、それも西洋の作曲家で、冨田勲の「新太閤記」をたちまち連想するような「世界観」を持つ人物がいる…。 最も敬愛して止まない、イギリス近代の大作曲家、ラルフ(本人は、レイフと発音することを好んでいた)・ヴォーン=ウィリアムズ。 交響曲にも声楽を使い(マーラーとは違う使い方でした)、逆に宗教曲にも声楽(ソリスト+合唱)のバックにフルオーケストラを使うなど、確かに冨田勲の楽曲編成に被る側面がある事に気付きます。 他にも、自国の民謡を大事に扱っている点、弦楽器の響かせ方が似ている点、メロディーを構成する音階が似ている点など、多くの共通性があるではないですか!!。 ずっと前から二人の事は知っていたつもりなのに…。 しかし、スッキリしました。大好きな二人の作曲家に、ある意味「共通点」があると解ったからです。 だから、自分は離れられないんだなぁ~と。
次回は、ヴォーン・ウィリアムズについてお話します。

作曲家  冨田 勲