ジャケ買いレコード(4)

1950年代末から1962年までNHK交響楽団の常任指揮者としても活躍したウィルヘルム・シュヒター(Wilhelm Schüchter)のN響との代表盤のひとつと云えば黛 敏郎の「涅槃交響曲」であろう。 筆者は学生時代の1970年頃に「涅槃像」を描いたこのLPジャケットに魅せられた。 シュヒターがN響常任指揮者就任間もないころのモノラル録音だったがこの再プレス盤では電気的にステレオ化されている(写真1  シヒター&N響「涅槃交響曲」/東芝TA-7003)。 このレコードで筆者は「涅槃」を横文字で「Nirvana(ニルヴァーナ)」と覚えた次第である。
続いてカラヤン&ベルリン・フィルの1960年代の録音から印象に残るジャケット2枚を紹介したい。 先ず1966年録音の「ショスタコーヴィチ/交響曲第10番」である。 このジャケット・デザインにはドイツの画家・彫刻家、舞台デザイナー「ゲッツ・ロペルマン(Götz Loepelmann)」が描いた幻想的な絵画が用いられている(写真2  カラヤン&ベルリン・フィル/ショスタコーヴィチ交響曲第10番(初出国内盤SLGM-1415)。 カラヤン&ベルリン・フィルは後にデジタル録音でこの作品を再録音(1981年)しているが筆者個人的にはジャケットとともにこちらの旧録音が好きである。
次に1968年録音の「プロコフィエフ交響曲第5番」はジャケット・デザインがフランス印象派画家ポール・ゴーギャン(Paul Gauguin)の描いた絵であることをずっと後になって知り驚いた1枚である(写真3 同、プロコフィエフ交響曲第5番、独グラモフォン 139 040 SLPM)。
今回ラストはイギリス音楽のスペシャリストのひとりヴァーノン・ハンドリー(Vernon Handley)、エルガー交響曲第1番のLPジャケット、管弦楽はロンドン・フィルハーモニー管弦楽団で1979年の録音である。 英国のクラシック・レコード廉価盤「Classics for Pleasure」レーベルでこのシリーズにはジェームズ・ロッホラン、コリン・ディヴィス、アンドレ・プレヴィンなどそうそうたる指揮者が揃っていた。 このハンドリーが指揮するエルガー交響曲第1番のジャケットはフランス印象派画家「アドルフ・ヴァレット(Adolphe Vallette)」の1910年作「Hansom Cab at All Saints」、冬のスモッグに煙るロンドン、グロブナー広場の辻馬車を描いた絵が使用され、なかなか魅力的だった(写真4  ハンドリー&ロンドン・フィル/エルガー交響曲第1番、英Classics for Pleasure CFP 40331)。

(つづく)

写真1    黛 敏郎「涅槃交響曲」/シュヒター&NHK交響楽団(東芝TA-7003)

写真2    ショスタコーヴィチ交響曲第10番/カラヤン&ベルリン・フィル(1966年録音-日グラモフォンSLGM-1415)

写真3    プロコフィエフ交響曲第5番/カラヤン&ベルリン・フィル(1968年録音 独グラモフォンSLPM-139 040)

写真4     ヴァーノン・ハンドリー&ロンドン・フィル/エルガー交響曲第1番(英Music for Pleasure-CFP 40331、1979)