ジャン=クロード・エロワの現代音楽コンサート - つくば科学万博 '85 -

ジャン=クロード・エロワの現代音楽コンサート - つくば科学万博'85 -

昨日に続き「つくば科学万博」のイベントからインパクトが強く残る「現代音楽コンサート」から紹介したいと思う。今回はフランスの「ナショナル・デー&ウィーク・イベント」として開催された「ジャン=クロード・エロワ現代(電子)音楽コンサート」である。ジャン=クロード・エロワ(Jean-Claude Éloy、当時47歳)はフランスの現代・電子音楽界を代表する作曲家のひとりである。彼の師には古くはフランス6人組のひとりダリウス・ミヨー(Darius Milhaud)、指揮者・作曲家でフランス国立音響音楽研究所、初代所長を務めたピエール・ブーレーズ(Pierre Boulez),さらにドイツの現代電子音楽作曲家のカールハインツ・シュットクハウゼン(Karlheinz Stockhausen)とそうそうたる名前があがる。当時、「博覧会協会催事」担当者としてフランス側から最初にこのコンサート催事の話を受けた時、正直なところ果たしてこのイベントが万博来場者にうまくうけるか否かがやはり心配の種だった。発表されたプログラム内容は彼の超大作三作品、作曲順に「シャンティ(Shânti/<Paix>)(1972-73)、「楽の道(Gaku-no-Michi)」(1977-78)、「余韻(Yo-In)」(1980)であった。いずれの作品も数多くのパーカッションと電子音響機器を使用しほとんど切れ目なく演奏され演奏時間も約4時間を要する。それぞれの作品内容を簡単に紹介すると「シャンティ」はサンスクリット語で「平和」を意味するとのことで第二次大戦中の戦禍の音源を元に電子的処理されドイツ、ケルンの電子音楽スタジオで制作されている。まさに「ミュジーク・コンクレート(Musique Concrète)(具体的電子音楽)」の世界である。「楽の道」はエロワ氏が1977年、78年に「NHK電子音楽スタジオ」を訪問した際に東京で収録した音源を電子加工して制作されたとされる作品、「余韻」は字のごとく「残響音」と「パーカッション」の響きが印象的な作品で1980年にオランダ、ユトレヒトの音響研究所で制作された作品である。共演した即興パーカッション奏者、ミカエル・ランタの巧みな技が印象的でまたエロワの電子音響機器の巧みな操作も思い浮かぶ。
公演は5月28日の非公開リハーサルから始まり6月3日まで万博会場内の小ホール「EXPO Hall」で行われた。やはり出し物が無調性の現代電子音楽の世界であったため会場の聴衆も「戸惑い」を覚え出入りが激しかったことも事実である。しかしコンサート日程も後半に入ると現代音楽に関心を持つファンも少しずつ増えはじめ会場も落ち着きを取り戻し最終回の「余韻」を迎えることができ無事終了することができた。
写真1と2は即興パーカッション奏者、ミカエル・ランタ(共演)。
写真3はグラインダーで火花を飛ばすジェラルド・ラフォース(共演)。
写真4はエロワ・ランタ・ラフォースほか舞台運営スタッフ一同との記念写真(EXPO ホール)
写真5はラフォース/エロワ/ランタのサイン、エロワは「楽の道」と日本語で書いてくれた。
*写真1~3は「博覧会協会催事部撮影」(5/28リハーサル日)

写真1 打楽器を巧みに操るミカエル・ランタ(1985年5月30日リハーサルから)

写真2 即興パーカッション奏者 ミカエル・ランタ

写真3 グラインダーで火花を散らすジェラルド・ラフォース

写真4 公演終了後、出演者、舞台運営スタッフ一同との記念スナップ

写真5 色紙に書いてもらったエロワ、ランタ、ラフォースのサイン