チャイコフスキー 交響曲第7番変ホ長調(ボガティレフ版)
今日はレコード棚を整理中にユージン・オーマンディ指揮フィラデルフア管弦楽団の懐かしいチャイコフスキー”交響曲第7番変ホ長調(写真)が出てきた。 このLP盤はジャケット表記にあるように世界初録音盤(1962年録音)であった。 そもそもチャイコフスキーの交響曲に「第7番」が存在したのか(?)と思われる方もおられるかも・・・そこで今回はそのあたりを整理してみたい。
ご承知の通りチャイコフスキー最後の交響曲作品は「第6番”悲愴”」(1893年)である。 ここで事実関係を整理すると1888年に「第5番」を書き終えたチャイコフスキーは次作の交響曲の構想に取りかかる。 彼は当初「人生」をテーマにした交響曲を書きたかったようだ。 しかし作曲途上で放棄、これを「ピアノ協奏曲」に転換する方向に舵をきる。 3楽章構成で練られた協奏曲は結局のところ完成したのは第1楽章の「アレグロ・ブリランテ」のみで第2・第3楽章はスケッチのみが遺された。 それが彼の死後、遺作として単一楽章で出版された「ピアノ協奏曲第3番変ホ長調作品75」である。 後に弟子のセルゲイ・タネーエフが先のスケッチを補筆、オーケストレーション完成させこれが「ピアノと管弦楽のためのアンダンテとフィナーレ作品79」となった。
さて本題の「交響曲第7番」だがロシアの作曲家「セミヨン・ボガティレフ(Semyon Bogatyryev/1890-1960)」がこの「ピアノ協奏曲第3番」をベースに4楽章構成に補筆完成させたものである。 彼は第1楽章にこの第3番の協奏曲、第2楽章と第4楽章にタネーエフ編の「アンダンテとフィナーレ」から再編集、第3楽章-スケルツオ楽章(Vivace assai)には「ピアノのための18の小品」作品72から第10曲/「幻想的スケルツォ」(これは元来この交響曲の草稿から改作されたもの)を管弦楽に編曲している。 因みにこのオーマンディ盤の解説によれば「ボガティレフ編曲版」による世界初演は1957年2月7日にミハイル・テリアン指揮モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団により行われている。 参考までにオーマンディ盤の各楽章演奏時間は第1楽章12分03秒、第2楽章11分01秒、第3楽章6分33秒、第4楽章7分36秒となっている。 また近年ではロシアの作曲家ピヨートル・クリモフによる3楽章構成による「クリモフ版」(2005-2006)も存在することも付け加えておきたい。
チャイコフスキー:交響曲第7番/ピアノ協奏曲第3番:(https://ml.naxos.jp/album/OC672)
(ジルベルシュテイン(Pf)/キタエンコ指揮ギュルツェニヒ管