名匠ゲオルク・ティントナーによるブルックナー
波乱万丈、苦節の名匠ゲオルク・ティントナー(Georg Tintner/1917~1999、写真1)が晩年、英ナクソス(NAXOS)に録音したブルックナー交響曲全集は演奏のみならず自筆による解説、使用した「版」のこだわり等々とても興味を惹いた。 彼はウィーン出身だが戦時中から戦後にかけ様々な苦難を乗り越え世界中を飛び回り南半球、ニュージーランドやオーストラリア、そして1960年代には南アフリカのケープタウン市のオーケストラの常任指揮者も務めている。 しかしながら彼が世界のクラシック音楽ファンから注目を浴びたのはまさにこの「ナクソス」のブルックナー交響曲録音からと言っても過言ではないだろう。 筆者もリリースされる度に買い求めたものである。 そして2000年には読売日本交響楽団の客演も予定されブルックナーを振ることなっていた。 筆者も楽しみにしていた一人だった。 しかし持病(悪性黒色腫)の悪化を苦にハリファックス(カナダ)の自宅マンションから悲劇的な飛び降り自殺、来日公演も幻に消えた。 紹介盤は全集録音のなかでも個人的に一番好きなロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団との1998年録音「第3番ニ短調」(1873年第1稿)による演奏時間も77分を超える聴きごたえある名演である (写真2 CDジャケット、英NAXOS 8.553452)。