懐かしき”東急ゴールデンコンサート”の想い出

懐かしき”東急ゴールデンコンサート”の想い出

私が学生時代には無料で楽しめる「公開録音コンサート」も開催されクラシック音楽愛好家の間では大変重宝されていたことを懐かしく思い起した。とりわけ今回紹介する「東京急行」がスポンサーとなり「文化放送」制作の解説つきの「東急ゴールデン・コンサート」にはよく足を運んだものである。管弦楽は「日本フィルハーモニー交響楽団」、私が通い始めたころには定期公演のように原則毎月1回開催されていた。この「冠コンサート」の歴史を辿ってみると記念すべき最初の無料公開演奏会は1959年4月2日「サンケイホール」で当時「日本フィル」の常任指揮者を務めていた渡邉暁雄の指揮で行われている(写真1 放送開始当時の「東急ゴールデン・コンサート」の広告)。ちなみに私がこのコンサートに通い始めた時の会場は「渋谷公会堂」になっていた(写真2 当時のプログラム小冊子)。
コンサートの正味時間は毎回休憩なしの約1時間前後で解説は音楽評論家の「有坂愛彦(ありさか よしひこ)」が担当していた。「公開録音コンサート」への申し込みは往復ハガキで応募、当選すれば「座席引き換え」通知が返信された。指定座席券は当日会場で引き換える方式であったが当時学生の私は早めに並ぶこともでき結構良い席を確保できた。

次に私が実際に聴いたこのコンサートの中から今も強く印象に残る次の3つ演奏会を紹介したい。

◆(第606回)1970年11月5日渋谷公会堂 指揮 ジャン・マルティノン
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
ブラームス:交響曲第1番ハ短調 作品68
ピエルネ:「シダリースと羊牧神」第1組曲から
(写真3/4はこの時のプログラム小冊子)
この第606回に登場したジャン・マルティノンは当時3度目の来日であった。1953年・1963年にはNHK交響楽団に客演、日本フィルにはこの時初登場。やはりブラームスが熱演で11月11日の第208回定期公演でも凄い演奏を聴かせていた。当時のコンサート・マスターはルイ・グレーラーが務めていた。定期公演のブラームスは後に「Platzレーベル」からCD化された(廃盤)。

◆(第636回)1971年6月3日渋谷公会堂 指揮 小澤征爾
ヴィヴァルディ:ファゴット協奏曲ニ短調
ベルリオーズ:交響曲「イタリアのハロルド」作品16
(写真5/6はこの時のプログラム小冊子)
この第636回登場、小澤征爾は当時「サンフランシスコ交響楽団」音楽監督・常任指揮者を務め日本フィルの首席指揮者を兼任していた。「イタリアのハロルド」のヴィオラ独奏は当時「日本フィルーボストン響」交換楽員として来日中のイザック・ショッテンが務めた。

◆(第675回最終回)1972年3月2日渋谷公会堂 指揮 小澤征爾
モーツアルト:「13管楽器のセレナード変ロ長調」K.361から
ヴェルディ:「シチリア島の夕べの祈り」序曲
ベートーヴェン: 交響曲第5番ハ短調 作品67
(写真7/8はこの時のプログラム小冊子)
この公演が「最終回」の「東急ゴールデン・コンサート」となった。指揮は御大の小澤征爾が見事にトリを務めた。また2月の第235回定期公演ではベルリオーズ「テ・デウム」を日本初演した。写真9/10は日本フィル第235回定期公演プログラム・演奏曲目である。

写真1 東急ゴールデンコンサート放送開始当時の広告

写真2 「東急ゴールデンコンサート」プログラム冊子

写真3 1970年11月ジャン マルティノン指揮プログラム冊子

写真4 1971年11月ジャン・マルティノン指揮演奏曲目

写真5 1971年6月小澤征爾指揮東急ゴールデンコンサートプログラム冊子

写真6 1971年6月小澤征爾指揮演奏曲目

写真7 1972年3月最終回東急ゴールデンコンサート プログラム冊子 小澤征爾指揮

写真8 最終回「東急ゴールデンコンサート演奏曲目1972年3月小澤征爾指揮

写真9 日本フィル第235回定期公演プログラム表紙

写真10 日本フィル第235回定期公演演奏曲目ベルリオーズ テ・デウム日本初演