私の落語・演芸レコード・コレクションから(5)
〜志ん朝とクラシック音楽コンサート〜
五代目「古今亭 志ん生」を父に持つ三代目「古今亭 志ん朝」は1962年(昭和37年)5月、36人抜きで入門からおよそ5年で真打昇進を果たし落語界のサラブレッドとも云われた噺家だった。 その芸風は粋な語り口でまさにスタイリッシュな江戸前の落語に惚れ込んでしまう。 筆者も師の落語にハマってしまい時間が許す限り定席や独演会、ホール寄席等々に通いつめた。 今回は少し角度を変えて「オーケストラ・コンサート」に特別出演した「志ん朝」師の思い出を綴ってみたいと思う。
若き「志ん朝」は「日本フィル」が毎年夏休みに開催する特別コンサート「山本直純」指揮する「ウィット・コンサート」に語り役で出演しその落語調の語りは満員の聴衆を沸かせていた。 写真1は1970年の「第4回日本フィル・ウィット・コンサート」の広告(第203回日本フィル定期公演プログラムから)でこの時は山本直純作曲「日本昔ばなしによるシンフォニア・ブッファ“銀河姫の昇天”」(台本 山田洋次)の語りを務めている。 筆者がさらに強烈な印象が残る語り、1967年第1回目のコンサートはプロコフィエフの音楽物語「ピーターと狼」だった。 この模様は「山本直純フォエヴァー”歴史的パロディ・コンサート”」と題して2003年にCD化されている(写真2)。 この演出ではさすがに噺家らしく演奏に先立ち「前口上」を置いている。また原作にない「狸」の登場も「志ん朝」のアイディアと云われている。 実にユニークなこれらの演出は聴衆に大うけだったことも思い起す(写真3-打ち合わせをする若き志ん朝)。