長時間収録LPレコードについて(3 、完)
~「トリミクロン・ディスク」(フランス)の世界 ~
このテーマの締めくくりはフランスで開発された「トリミクロン・ディスク(Trimicron Disque)」を取り上げてみたいと思う。 このまさに超長時間収録を可能にしたこのLPレコードは1970年代半ば頃にクラシック音楽愛好家でもあるラベ博士(Docteur E. RABE)により考案された従来のLP収録時間の3倍(片面最長約60分)の収録を可能にした超長時間LPディスクである。 LPジャケットにはフランス語で「1 disque: 2heures TRIMICRON 33T triple durée 」の表記がある(写真1 Trimicron Disque LPジャケット)。 このレコードの解説によればクラシック音楽愛好家が長い交響曲をレコードで鑑賞する際レコード面をできるだけ裏返すことなく鑑賞したいという願望を叶えた画期的なディスクであると書かれている。 ひとことで言えばレコードに刻まれた溝の間隔を取り除き目一杯詰め込んだレコードと云えるだろう。 従って当然のことながらレコードの内周に進むほど溝も詰まっており埃やキズに注意しないと針飛びも起こす可能性があることは否めない。 筆者もこのLPを聴く時は多少針圧を重くしている(写真2 LPに記載された「Trimicron Disque」の説明)。 解説左上の写真が考案者の「ラベ博士」左下の写真が「トリミクロン・ディスク」制作装置である。 この写真のLPは筆者が1970年代にパリのレコード店で求めた1枚で「TCHAÏKOVSKY」の作品が三曲、第1面に交響曲第6番「悲愴」(47分22秒)と「弦楽セレナード」の第1楽章(9分20秒)計56分42秒、第2面に「弦楽セレナード」第2楽章 ~ 第4楽章(18分47秒)と「ヴァイオリン協奏曲」(34分27秒)で計(53分14秒)、なんとトータル演奏時間109分56秒と驚異的な収録時間である(写真3 LPジャケット裏面に記載された演奏データ)。 因みに各作品の演奏は録音年月日等不明だが「悲愴」:エドゥアルト・リンデンベルク指揮/ウィーン・フォルクスオパー管弦楽団、「弦楽セレナード」:アルフレッド・シュルツ指揮/南ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団、「ヴァイオリン協奏曲」:オトマール・マーガ指揮・ラルフ・ホルムズ(ヴァイオリン)/ニュルンベルク・フィルハーモニー管弦楽団となっている。 レコードの音質は全体的にきれいにまとまっているがダナミック・レンジは狭く感じる。 尚、レコード・レーベル・レコード番号は「MDR(MAGNETIC DISC RECORDING)」-107 LS14 である。
(完)