「アバドのニューイヤー」と「こうもり」を立ち見で聴く
「アバド&ウィーン・フィル、1988年ニューイヤーコンサート」とフォルクスオパーのオペレッタ「こうもり」を立ち見で聴く- 1988年1月1日、ウィーンにて-
「ウィーン交響楽団」によるベートーヴェン「第9」コンサートからホテルへの帰り道、「ウィーン楽友協会ホール」楽屋口通路横にさしかかった時、ウィーン・フィルとの「ジルヴェスターコンサート」を終えた指揮者のクラウディオ・アバドとバッタリ出会った。私は今回「ニューイヤーコンサート」へ行く予定はなかったのだが彼と出会った瞬間、気が変わり無性に行きたい気持ちになった。しかしチケットはない。そこでふと思いついたのが「楽友協会大ホール」1階平土間後方スペースの「立ち見席(Stehparterre)」である。明日会場に行けば一人ぐらい何とかなるかもとダメモトで行ってみることにした。その結果、何とかなる時はなるもので「立ち見席」を入手、昨年のカラヤンに続きアバドの「ニュイヤーコンサート」も聴くことができた(写真1 プログラム表紙)(写真2 1988ニューイヤーコンサート、アバド指揮)。しかしながら「立ち見席」はやはり最悪だった。ホール後方にある4本の大きな柱も視界を遮りまた立ち見最前列を確保しない限りステージを見ることは難しい。しかも私は立ち見の一番後ろの列になってしまいほとんどステージを見ることができなかった。プログラムはレズニチェク歌劇「ドンナ・ディアナ」序曲から始まりヨゼフ・シュトラウスのポルカ・マズルカ「燃える心」、ポルカ・シュネル「休暇旅行で」と続く。立ち見席ではウィーン・フィルの「音」だけを楽しむという感覚である。またアバドらしい選曲は第2部で演奏された「ヨハン・シュトラウスII/ヴェルディ歌劇「仮面舞踏会」によるカドリーユ」だろうか(写真3 プログラム・演奏曲目)。約25分の休憩を挟み一息入れたとはいえ通算2時間半立ちっぱなしはキツイ。それでも昨年に続き「ウィーン・フィル」のニューイヤーコンサートを生で聴けたことはこの上ない至福の境地だった(写真4 プログラムから-クラウディオ・アバド)。
ウィーンでの大晦日から元旦にかけてのもう一つの風物詩はフォルクスオパーでヨハン・シュトラウスのオペレッタを観ることだろうか。ニューイヤーコンサートでの「立ち見」で足が棒になった私はホテルに戻り少し休んだ後、こんどは「フォルクスオパー」に足を運んだ。出しものはヨハン・シュトラウスIIのオペレッタ「こうもり」である(写真5 プログラム表紙)。開演は午後7時。ここでも席は今回「立ち見」で我慢した。フォルクスオパーの「立ち見席」は3階席後方スペースである。しかし上演時間約3時間余りの「立ち見」はさらにキツイ。上演中は階段に座りこんでしまった。この日の公演では「アドリブ」の即興セリフも満員の聴衆の笑いを誘っていたが上演時間は休憩・カーテン・コールも含め4時間余りかかっていた。この日の指揮者はウィーン出身のコンラッド・ライトナー(Konrad Leitner)、当時フォルクスオパーの指揮者として活躍していた人である。結局、ホテルに戻った時刻は午前0時近くになり長いこの年の元旦の1日が終わった(写真6 指揮者・キャスト)(写真7 フォルクスオパー立ち見席チケット)。