「渡邉暁雄-その軌跡-」企画展、1999
〜1999年6月17日~30日、東京芸術大学美術館陳列館にて〜
指揮者、「渡邉暁雄(1919~1990)」の生涯・偉大な業績を振り返る企画展「渡邉暁雄-その軌跡」と題して1999年6月17日から30日まで東京芸術大学美術館陳列館で開催された(写真1 「渡邉暁雄-その軌跡カタログ本の表紙」)。主催は「東京芸術大学音楽学部並びに東京芸術大学美術館」である(写真2 カタログ本見開きページ)。このカタログ本には氏の生い立ちから演奏活動、演奏記録等々至るまで詳細に綴られている。とりわけ筆者の興味をひいたのは氏が遺した2つのシベリウス交響曲全集録音の記事だった。1956年、氏は「日本フィルハーモニー交響楽団」の創設に参画し初代の音楽監督に就任、鋭角的な音楽解釈、新即物主義的、知性派の指揮者として注目されていたそうである。そのような背景で1回目の「日本フィル」との世界初のステレオ録音による「シベリウス交響曲全集」が1962年に完結する。そしてそれから約20年後の1981年、前回録音を今一度洗い直して完成したのが2回目のデジタル録音による全集盤であった。筆者も時々この二つの全集盤を聴き比べながら鑑賞している(漫遊記143参照)。また氏の生涯における演奏活動全記録がこと細かく詳細に掲載されていることも非常に参考になる。写真3は1978年度演奏記録の一部だが冒頭に筆者も会場に足を運んだ「香港芸術祭1978」の「ボーンマス交響楽団」客演時の記録も掲載されている(漫遊記6参照)。このほか1965年12月5日「アメリカン・シンフォニー・オーケストラ」、1968年2月11日・12日「ベルリン・フィル」客演時の現地新聞評も興味深い(写真4・写真5)。このほか展示品では貴重な写真、パネル、コンサート・チラシ、プログラム、レコード(CD)、楽譜等々も興味が尽きなかった。とりわけレコードでは氏が1961年に「日本フィル」と録音したシューベルト「交響曲<未完成>」は第3楽章つき、シューベト自身が書いた9小節の管弦楽譜(11秒)とその後のスケッチ部分を氏と当時「日本フィル」のピアニスト河野純子氏の二人によるピアノ演奏で収録(3分44秒)された大変珍しい盤である。これも以前「漫遊記73」で紹介した「文化放送」の公開放送番組「東急ゴールデン・コンサート」で取り上げられ「日本コロムビア」からの要請でレコード化されたと云われている。筆者は1997年にオリジナル・ジャケットで初CD化されたCDで聴いている(写真6 オリジナル・ジャケット使用の渡邉暁雄&日本フィルの3楽章付き<未完成>)。