「第9」の季節に思う。
〜 '70年代の印象に残る「第9公演」から 〜
今年も「師走」を迎えこれからベートーヴェン「第9公演」が各地で展開される。 年を重ねるごとに過ぎ行く歳月も速く感じる今日このごろである。 そこで今回は今でも筆者の印象に残る'70年代の「第9公演」からひとつ紹介したいと思う。 それは1972年(昭和47年)「東京フィルハーモニー交響楽団」による公演である。 この年の12月、この楽団は「財団法人設立20周年」を迎え当時の常任指揮者大町陽一郎が常任指揮者を兼務していたドイツの「ドルトムント市立歌劇場」から専属歌手4人を招いて「第9公演」が開催される運びとなった。 公演は12月9日の「第157回定期公演」(東京文化会館)と13日「特別演奏会」(日比谷公会堂)の2夜に渡り大町陽一郎の指揮により行われている(写真1 東京フィル第157回定期、特別演奏会プログラム表紙/写真2 同公演、出演者・演奏プログラム)。 当時、国内オーケストラの「第9公演」でソリスト4人全員を海外から招いて行うことは珍しくそれだけにファンが注目した公演であった。 筆者は9日の定期公演の「第9」を聴いたが大町の指揮も力が入っていたことが文化会館の4階席からでもうかがえた。 歌手陣では特にバリトンのウォルフガング・アンハイザーのダイナミックな声量が印象的だった。 しかし彼はこの公演の2年後(1974年)、ケルンでオペラ出演中バルコニーから転落事故が原因で44歳の若さで亡くなっている。 写真3・4・5は第9公演出演の指揮者大町陽一郎ほか歌手陣(公演プログラムから)、写真6は12月9日公演チケットである。