「英デッカ」の「ロンドン・ステレオ・ラボラトリー・シリーズ」から
今回は「超長時間収録盤」とは対照的にさらにハイ・クオリティな音質を目指したレコード「ロンドン・ステレオ・ラボラトリー・シリーズ」にスポットを当ててみたい。
このシリーズは「英デッカ」の選りすぐりの音源をマスター・テープから最大限に引き出して制作されたLPレコードだった。 クラシック編は1976年から78年にかけて「キング・レコード」からリリースされていたものである。 贅沢にゆったりとカッティングされた今回紹介するブラームス「ピアノ協奏曲第1番」などはLP1枚半、つまり三面にまたがり収録されていた。 とにかくどれも片面収録時間が最長20分前後に押さえられダイナミック・レンジの広さとSN比も大変良好でオーディオ装置のチェックにも適したLPだった。 なかでも次の3枚はとりわけ現在も筆者の愛聴盤である。
・<写真1・2>グルーグ:ピアノ協奏曲イ短調 作品16、ラドゥ・ルプー(ピアノ)/アンドレ・プレヴィン指揮 ロンドン交響楽団(1973年6月録音、GXP-9004)
冒頭からの地響きがするようなティンパニーダイナミックで重厚なピアノと管弦楽の響きに圧倒される。
・<写真3・4>リムスキー・コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35、 ズービン・メータ指揮 ロス・アンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団 (1974年4月録音、GXP-9012)
音の絵巻を聴くようなこの作品のオーケストラの色彩感、並びに各楽器の響きを繊細に捉えコンサート・マスターのシドニー・ハースのヴァイオリンがまた印象的である。
・<写真5・6>ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調作品15、アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)/ズービン・メータ指揮 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団(1976年4月録音、GXG9005-06)
引退直前のルービンシュタインの録音でこれは通算4度目の同作品の録音であった。 各楽章毎とにLP三面に渡り贅沢に収録されている。 それだけにダイナミック・レンジが広く重厚で渋いブラームスを鑑賞できる。