エミール・ギレリスのベートーヴェン「ピアノ協奏曲全集」(1954~1957録音)
20世紀のソヴィエトを代表する名ピアニストのひとりエミール・ギレリス(Emil Gilels /1916~1985)が弾くベートーヴェンには定評があった。 彼はベートーヴェン・ピアノ協奏曲全曲録音をクルト・マズア&ソヴィエト国立交響楽団との珍しいライブ録音(1976年)を含めると1968年のジョージ・セル&クリーヴランド管弦楽団、そして今回紹介する1950年代録音(一部ステレオ録音)と3つの全集録音を遺している。 とりわけ筆者個人的には今回スポットをあてる若きギレリスの1950年代の演奏が一番好きである。 しかも筆者が最初に聴いたベートーヴェンのピアノ協奏曲のレコードがギレリスの弾くこの第5番”皇帝”だった (写真1 ギレリスの「皇帝」/レオポルド・ルートヴィッヒ指揮フィルハーモニア管、1957年ステレオ録音、日本コロムビアLPジャケット、OS-3006 1961年リリース)。 この重量感あるズッシリとした演奏は今でも私のベスト盤と思っている。
そして今回紹介するCD BOXは仏EMI Classicsからモノラル録音の第3番(1954年録音)、第1番・第2番(1957年録音)とステレオ録音、第4番・第5番(1957録音)を含むヴァイオリン協奏曲など他の協奏曲作品もまとめた1995年リリースのベートーヴェン協奏曲作品セットである。 ピアノ協奏曲の指揮とオーケストラはモノラル録音の第1番・第2番/アンドレ・ヴァンデルノート&パリ音楽院管弦楽団、第3番/アンドレ・クリュイタンス&パリ音楽院管弦楽団で録音会場はパリのサル・ワグラム、そしてステレオ録音の第4番・第5番”皇帝”はレオポルド・ルートヴィッヒ指揮フィルハーモニア管弦楽団となっている。 このステレオ録音はロンドンのアビーロード・スタジオ(Abbey Road Studios)で行われている。 今から半世紀以上も前の録音だが時代を感じさせない素晴らしい音質にもまた魅力を感じる (写真2 ベートーヴェン-協奏曲作品CD BOX 仏EMI Classics、7243 4 83418 2 2 /写真3・ -CD収録作品・演奏録音データ)。