ジャケ買いレコード(6)

今回はフランスのクラシック専門レコード・レーベル「STIL discothèque(スティル・ディスコテック)」の貴重盤からジネット・ヌヴー(Ginette Neveau/1919-1949)のブラームス「ヴァイオリン協奏曲」のLPジャケットから紹介したいと思う。 彼女は稀にみるフランスの天才ヴァイオリニストだった。 しかし1949年10月アメリカへの演奏旅行に向け旅立ち航空事故で30歳の若さでこの世を去った。 このレコードは亡くなるおよそ1年半前にハンブルクでのハンス・シュミット・イッセルシュテット指揮北ドイツ放送交響楽団とのコンサート・ライヴ録音、彼女が最も得意とするブラームス「ヴァイオリン協奏曲」である(写真1  仏STIL discothèque-0305 S 48 -1948年5月3日ライヴ録音 )。 この1981年にリリースされたLPジャケットは一面に赤色で書かれたフランス語表記の文字に強烈なインパクトを感じた。
次のアンタル・ドラティ(Antal Dorati)の米マーキュリー(Mercury)録音のチャイコフスキー祝典序曲「1812年」・ベートーヴェン「ウェリントンの勝利」はステレオ初期録音だがステレオ効果抜群の1枚、共に本物の大砲の音が入っており迫力も満点オーディオ・チェック・レコードとしても当時重宝された。 写真のジャケットは「オランダ盤」でこちらはイラストと文字とのバランスが興味深い(写真2  蘭Mercury-130514 MGY)。
続いてモートン・グールド(Morton Gould)が指揮するシカゴ交響楽団によるリムスキー=コルサコフ「交響曲第2番”アンタール”」とミャスコフスキー「交響曲第21番」がカップリングされた珍しい1枚である。 指揮のモートン・グールドは作曲家、編曲家、ピアニストの顔を持ちクラシックのみならずポピュラー分野でも活躍した人である。 リムスキー=コルサコフの「アンタール」は代表作「シェエラザード」の陰に隠れ演奏される機会が少ないが東洋的な色彩も色濃く感じる作品である。 ジャケット・デザインもアラビア風でエキゾチックなイラスト画に惹かれた(写真3  日ビクター(RCA)SX-2020 1969年リリース)。
おしまいは、ユーリ・アーロノヴィチ&ロンドン交響楽団による1977年録音のチャイコフスキー「交響曲”マンフレッド”」である。 アーロノヴィチはレニングラード(現サンクトペテルブルク)出身の名指揮者で1979年12月に「読売日響」に客演「第9」を振っている。 この「マンフレッド」は極端にテンポが遅く演奏時間も65分を超える非常に個性的な演奏である。 ジャケットには18世紀〜19世紀にかけて活躍したオーストリアの画家「ジョセフ・アントン・コッホ(Joseph Anton Koch)の作品スイスのベルナーオーバーランド山中の滝が使用されまさに超人「マンフレッド」のイメージを彷彿させる(写真4  ユーリ・アーロノヴィチ&ロンドン響「チャイコフスキー”マンフレッド交響曲”」独グラモフォン-2530 878)。

写真1    ジネット・ヌヴー(Vn) /ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」(仏STIL discothèque 0305 S 48)(https://ml.naxos.jp/album/233585)

写真2    ドラティ/ チャイコフスキー「1812年」ほか (マーキュリー オランダ盤130514 MGY)

写真3    モートン・グールド&シカゴ響/リムスキー=コルサコフ交響曲第2番ほか( 日ビクターSX 2020])

写真4    ユーリ・アーロノヴィチ&ロンドン響/チャイコフスキー マンフレッド交響曲(独グラモフォン 2530 878)