フィデリオを観る

「ベートーヴェン音楽祭・ボン、1977」(3)

オペラ「フィデリオ」を観る - 1977年9月、ボンにて -

「音楽祭」3日目(9/12)も天候は気持ちの良い秋晴れだった。今日の夜はオペラ「フィデリオ」を鑑賞し私のこの音楽祭の予定は終了する。開演は19時30分ということで滞在したホテルが「ライン河」に面しており直ぐ前が美しい公園になっており午前中は対岸を行く列車を眺めながらのんびりと散策を楽しんだ(写真1 ライン河対岸を走る列車・筆者撮影)。そして午後の列車でボンに向かった。
会場は昨日までの「ベートーヴェンハレ」の目と鼻にあるライン河畔の「ボン市立劇場(Theater der Stadt Bonn)」である。(写真2 地図参照)会場に入るとオペラ公演とあってドレス・アップしたご婦人がたの華やかさがムードを一段と高めていった。今日のタクトはシクステン・エールリンク(Sixten Ehrling),スウェーデン・マルメ出身の名指揮者である。私が彼の指揮に接するのもこの日が初めてであった。スウェーデン王立歌劇場の音楽監督も務めオペラ指揮者としても誉れが高い彼だけに期待もはずむ。また今回の公演で私が注目した歌手はフロレスタン役のロベルト・シュンク(Robert Schunk)、彼は当時ボンで活躍中の名テノールで「バイロイト音楽祭」にも出演、次にレオノーレ役のハンナ・リソウスカ(Hanna Lisowska)、彼女はポーランド出身の名ソプラノ、そしてロッコ役のクルト・モル(Kurt Moll)、彼は説明不要のドイツの名バス歌手、以上の3人である。さらに演出はゴットフリート・ワーグナー(Gottfried Wagner)が担当、彼は長年「バイロイト祝祭劇場」の総監督を務めたヴォルフガング・ワーグナーの息子である(写真3 オペラ「フィデリオ」プログラム表紙)(写真4 キャスト)。
管弦楽はボン・ベートーヴェンホール管弦楽団。因みにこの楽団は1968年にベルリンの「聖ヘドヴィッヒ教会合唱団」を伴い来日も果たしている。この時の指揮は当時の音楽監督フォルカー・ヴァンゲンハイム
(Volker Wangenheim)(写真5 1968年来日公演プログラム表紙)。
さてこの日の公演で印象的だったのはマルツェリーネ(Sop)、レオノーレ(Sop)、ロッコ(BS)、ヤキーノ(Ten)の四重唱「不思議な気持ち」の美しいハーモニー(第1幕)、第2幕の始めに歌うフロレスタンのアリア「人生の春の日に、幸福は逃げ去り」の美声、さらにレオノーレとフロレスタンの二重唱「言いようもない喜び」も二人の息がピッタリ。エールリンクの指揮ぶりも素晴らしかった。
ライン河の心地よい秋風を受けながら会場を後にした。(写真6 公演チケット)

写真1 ライン河対岸を走る列車

写真2 ベートーヴェンハレ・コンサートホールとボン・市立劇場の位置関係を示す地図

写真3 オペラ「フィデリオ」プログラム表紙

写真4 フィデリオのキャスト

写真5 ボン・ベートーヴェンホール管弦楽団1968年来日公演プログラム表紙

写真6 フィデリオのチケット