フェレンツ・フリッチャイ&ベルリン放送響の”悲愴”

〜  幻の「1959年ステレオ・セッション」の復活  〜

今回はハンガリーの伝説の名匠フェレンツ・フリッチャイ(Ferenc Fricsay/1914~1963)が首席指揮者を務めたベルリン放送交響楽団 (現、ベルリン・ドイツ交響楽団」による幻のステレオ・セッション盤を取り上げてみたい。 フリッチャイは1959年の年初、2度目の手術を受けしばらく静養を続けた後9月、コンサート活動に復帰しベルリンでベルリン放送響とのコンサートを行った。 当時の演奏記録資料によればプログラムはベートーヴェン「エグモント」序曲・バルトーク「ピアノ協奏曲第2番」(ピアノ-ゲザ・アンダ)そしてチャイコフスキー「交響曲第6番 “悲愴“」を取り上げている(1959年9月13日・14日、ベルリン芸術大学ホール)。 紹介盤「悲愴」のセッションもちょうどこの時期に「独グラモフォン」によりダーレムの「イエス・キリスト教会」で行われている。 しかしフリッチャイの要請で「第一楽章」を録り直すこととなったようだがその機会を失いお蔵入りになってしまった。 そして録音から35年余りが経過した1996年に世界初CD化され日の目を見た幻の録音である (写真1 CDジャケット、国内盤グラモフォンPOCG1957)。 ちなみにフリッチャイはモノラルでこの「悲愴」を1953年に「ベルリン・フィル」とも録音している (写真2 CDジャケット、1953年モノラル盤-独グラモフォン445 409-2 、1994年リリース)。 しかしその演奏スタイルは全く異なり紹介盤のステレオ録音は演奏時間もトータルでおよそ10分ほど遅い (写真3 1959年ステレオ盤、演奏データ/写真4 1953年モノラル盤演奏データ)。 録音も素晴らしく晩年のフリッチャイの繊細で深みも増した演奏に魅了される。

写真1    フリッチャイ&ベルリン放送響「悲愴」CDジャケット(国内盤グラモフォン-POCG 1957)

写真2    フリッチャイ&ベルリン・フィル「悲愴」CDジャケット(1953年モノラル録音独グラモフォン-445 409-2)

写真3    写真1のステレオ録音 演奏データ

写真4  写真3のモノラル録音 演奏データ