リアナ・イサカーゼ(Vn)を聴く
リアナ・イサカーゼ ヴァイオリン・リサイタルを聴く
- 1973年3月、フランクフルトにて -
今日は私が海外で最初に聴いた室内楽コンサートを紹介してみたいと思う。時は「第2回・念願のケンペを聴く」と同時期1973年3月。私はほぼフリータイムの長期の学生ツアーに参加していた。私にとってはついこの間のような気がするが「光陰、矢の如し」、もう45年も前のことである。このツアーは最終訪問地がロンドン、途中ヨーロッパの主要観光都市を巡るものだった。ツアーほぼ中日、私はフランクフルトに3日間滞在した。フランクフルトの正式名称はフランクフルト・アム・マイン、つまりマイン川沿いのフランクフルトである。これは当時の東側ドイツのポーランド国境近くに位置する同名のフランクフルト市と混同を避けるためでもある。滞在2目の朝、私は偶然にも街のイベント告知板に「リアナ・イサカーゼ、ヴァイオリン・リサイタル」の掲示を見つけた。会場は「フランクフルト歌劇場Oper Frankfurt)」。イサカーゼについてはこれまでにFM放送で何回か耳にしていたのでこの時ぜひ聴いてみたい気持ちにかられた。彼女は当時のソヴィエト連邦、現在、ジョージアの首都トビリシの出身、19歳でパリの「ジャック・ティボー国際コンクールに優勝、さらに1970年には「シベリウス国際ヴァイオリン・コンクール(ヘルシンキ)」でも優勝の経歴を持つ当時新進気鋭の女流ヴァイオリニストである。
ところで、フランクフルトには「歌劇場(Oper)」と称する会場が2つ存在する。その一つがモダン建築で今回のリサイタルの会場「オパー・フランクフルト(Oper Frankfurt)(写真1 インターネットから)もう一つが旧歌劇場で現在はオーケストラ・コンサートがメインの「アルテ・オパー(Alte Oper)」(当時は改修工事中)である。(写真2 筆者撮影・1973年)少々混同しやすいがチケットをよく見て注意するがある。コンサートは3月12日午後8時から始まった。プログラムは前半がバッハとプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ、後半がドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ、ショーソンの「詩曲」、サラサーテ「ハバネラ」と続いた。ピアノ伴奏はロシアのリディア・ペトシェルスカヤという人が務めていた。(写真3、4 プログラム)当時の印象を思い起すとイサカーゼの巧さも光かり特に後半のドビュッシー、ショーソンも彼女の優雅で洗練された演奏にひっぱりこまれてしまった(写真5 コンサート・チケット)。
(写真6)は愛聴盤である。1980/81年にスタジオ録音されたこの対照的なシベリウスとシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲のCDは私の心を唸らせる1枚である。シベリウスはさすがに彼女のオハコ。指揮者ラザレフとロシア国立響も乗りに乗っている。もちろんシェーンベルクも聴きものだ。現在彼女は母国ジョージアの室内管弦楽団を引き振りをしたり(CDも出している)後進の指導にもあたっているようだ。今後の活躍もさらに期待したいところである。