リッカルド・シャイー、"メンデルスゾーン・ディスカヴァリーズ" CD
先日、友人との音楽談義でリッカルド・シャイーのCD「メンデルスゾーン・ディスカヴァリーズ」(写真1)が話題になった。 このCDはシャイーが「ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団」の音楽監督時代に録音した異稿による「交響曲第3番<スコットランド>」、序曲「フィンガルの洞窟」、未完の「ピアノ協奏曲第3番」(2006年マルチェッロ・ブファリーニ補筆完成版)等が収録されこれらは世界初録音として当時注目された(写真2 CD収録作品データ)。 録音は「フィンガル」が2006年9月、交響曲と協奏曲が2009年1月の「ライプツィヒ・ゲヴァントハウス」におけるライヴ録音である。
先ず序曲「フィンガルの洞窟」は通常1832年改訂稿が演奏されているがこのCDでは1830年ローマ稿(クリストファー・ホグウッド校訂版)が使用されており改訂稿とはオーケストレーションがかなり異なる。 因みにこの作品のドイツ語表記は「Die Hebriden」だが1830年作曲当初は単に「孤島(Die einsame Insel)とつけられたようである(写真3 フィンガルの洞窟(インターネット画像から))。
さらに余談になるが作曲者メンデルスゾーンは1829年の夏スコットランドの「ヘブリディース諸島」の一つこの洞窟がある「スタッファ島」に向かったが当日は悪天候のため船酔いし彼は島には上陸しなかったという話(!?)もあるようだ。 この「ローマ稿」での演奏は2009年9月校訂者ホグウッドの指揮でN響定期でも演奏されている。 「交響曲第3番"スコットランド”」は1842年稿(ロンドン稿)「トーマス・シュミット=ベステ校訂版」による演奏である。 全体的に速めのテンポで指揮するシャイーに驚いたがこの版では第1楽章の展開部からコーダ、終楽章のオーケストレーションが普段聴きなれた演奏と幾分異なることが興味深い。 またメンデルスゾーンがメアリー・ステュアートゆかりの「ホリルードハウス宮殿」(エディンバラ)を訪れた時この交響曲の冒頭の楽想スケッチを書き留めたという旋律も(55秒)クリスティアン・フォスのオーケストレーションで収録されている(写真4 筆者が1979年訪れた時の「ホリルードハウス宮殿」パンフレット)。 写真5は「ライプツィヒ・ゲヴァントハウス」ホール入口脇に立つメンデルスゾーン像である(2002年9月筆者撮影)。