ヴォーン・ウィリアムズ「交響曲第2番 "ロンドン"」、私のこれ1枚

リチャード・ヒコックス指揮ロンドン交響楽団(CD-英Chandos-CHAN9902・2000年録音)

イギリスの国民主義音楽を代表する一人、ヴォーン・ウィリアムズ(Vaughan Williams/1872-1958)は生涯に九つの交響曲を残している。 今回取り上げる第2番"ロンドン”は1912年から13年にかけて作曲された。 標題の通りロンドンの街の1日を描写した作品でほぼ同世代のアメリカのチャールズ・アイヴス(Charles Ives)の作品「夕暮れのセントラル・パーク」を思い起す。    この「ロンドン交響曲」、1914年3月ロンドンで初演後しばらくしてドイツで初稿のフル・スコアが紛失してしまう。 しかし作曲者自身、親友のジョージ・バターワース(George Butterworth/1885-1916)、 初演を指揮したジェフリー・トイ(Geoffrey Toye)らによりオーケストラ・パート譜をもとに復元される。 ヴォーン・ウィリアムズはその後3度の改訂を行い最終改訂版は1933年に完成し現在一般的に演奏されているのはこの改訂版によるものである。 リチャード・ヒコックス(Richard Hickox/1948-2008)がロンドン交響楽団と2000年12月にセッション録音したこのCDは世界初の1913年原典版による演奏であった(写真1 「CDジャケット」英Chandos-CHAN9902)。 ちなみに録音会場は「オール・セインツ教会(All Saints Church)」が使用されている。 4つの楽章から構成されるが一般的に演奏される改訂版での演奏時間はおよそ45分前後だがこのオリジナル版での演奏は60分を超える(写真2  CD「楽曲演奏時間」CDブックレットから)。 このCDに耳を傾けると改訂版にはない神秘的な響きの旋律がまだまだ含まれていたことがよくわかる。 特に長い終楽章はその幅を増している。 今後もこの作品を原典版でコンサートで聴く機会はほぼないと思われるので筆者にとっては貴重な1枚となった。 またこのCDにはこの交響曲を献呈された親友ジョージ・バターワースの牧歌「青柳の堤」が(Track1)に収録されている。 「ロンドン交響曲」と同時期の作品で作曲者が収集した民謡を折り込んだ美しい作品である。 写真3はリチャード・ヒコックスが1997年3月「新日本フィル」の定期に客演した際にプログラムに入れてもらったサインである。

交響曲第2番「ロンドン交響曲」(https://ml.naxos.jp/work/147331):リチャード・ヒコックス指揮ロンドン響

写真1    R.ヒコックス&ロンドン響「ヴォーン・ウィリアムズ「ロンドン交響曲」CDジャケット(Chandos-CHAN9902)

写真2    ヴォーン・ウィリアムズと各楽曲演奏時間(CDブックレットから)

写真3    R.ヒコックスに入れてもらったサイン(1997年3月)