名匠ペンデレツキの世界
ポーランドを代表する前衛音楽作曲家、指揮者のクシシュトフ・ペンデレツキ(Krzysztof Penderecki、写真1)の訃報をこの3月末(2020年)耳にした。 またひとり名匠が去り寂しさを憶えた。 彼は1976年の初来日以来たびたび訪日、日本のオーケストラに客演し自作の作品を披露した。 筆者個人的には1990年秋の「北ドイツ放送交響楽団」来日公演もまた記憶に残る。 彼の最初期の作風は「十二音技法」から始まりその後「音の塊(ト―ン・クラスター)技法」を試みその代表作が1959年~60年に作曲された「アナクラシス(Anaklasis)」や「広島の犠牲者の追悼のための哀歌」であった。 ちなみに後者のタイトルは当初「8分37秒」で演奏され実際の演奏時間が「8分26秒」だったので作品名「哀歌8分26秒」で出版されたというエピソードも興味深い。 今回紹介する1枚はペンデレツキの世界に気軽に浸ることができる彼自身の指揮による上記2作品を含む8作品が収録されたアルバム「マトリックス・ファイブ(MATRIX 5)」(1994年リリース)である。 1972年~75年にかけての録音を集大成したもので「アナクラシス」のみがロンドン交響楽団、そのほかはポーランド国立放送交響楽団との演奏である。 尚、「カプリッチョ」にはポーランドの現代音楽を得意とした名女流ヴァイオリニスト「ワンダ・ウィウコミルスカ」が参加している(写真2 CDジャケット、蘭EMI CLASSICS-CDM 5 65077 2 /写真3 CD収録作品演奏・録音データ)。