永遠の謎 シューベルト交響曲「未完成」

シューベルトの交響曲作品のなかでも最も万人に愛されている美しい「第7番(第8番)」がなぜ未完に終わったのかは色々な説があるにせよ現在も永遠の謎である。 このような類の謎はたとえば「江戸の絵師「写楽」は誰だったのか?」等々考えてしまうとひとつのロマンも感じてしまう。 今回紹介したいLPはシューベルト自身が遺した「第3楽章スケルツォ」の9小節で中断した管弦楽総譜とスケッチを基にオーストラリア、メルボルン出身の指揮者デニス・ヴォーン(Denis Vaughan)という人が補筆完成し録音した珍しいレコードである。 この方は日本では「知る人ぞ知る」指揮者と思われるがイギリスに渡り1950年代に指揮者トマス・ビーチャムのアシスタントも務めロイヤル・フィルの副指揮者として活躍、その後1960年代中頃にはローマに活動拠点を移した。 このレコードは彼が当時RCAレコードと契約した際にナポリ管弦楽団(The Orchestra of Naples)との「シューベルト交響曲全集録音」からの1枚で第一面には「第3番」が収録されている (写真1 LPジャケット、英RCA-Victrora VICS 6700B 1965年リリース)。  LPには録音年月の記載はないが録音場所が「Palazzo Reale, Naples」とあるのでナポリの「王宮」かと思われる (写真2 LP収録・録音データ/写真3 LPレーベル面)。  補筆された「第3楽章」は指揮者の忠実な感性もうかがえる。 尚、オーケストラ「ナポリ管弦楽団」の実体がよくわからなかったのもまた謎である。

写真1    デニス・ヴォーン&ナポリ管弦楽団「シューベルト交響曲第3番・第8(7)番」LPジャケット(英ビクトローラ-VICS 6700B)1965年リリース

写真2    LP収録・録音データ

写真3    LPレーベル面