浅草六区がよみがえる1枚のレコード、坂野 比呂志 /大道芸
江戸「元禄時代」の頃から盛り場とて賑わいを見せた「浅草寺」を囲む地域は明治期には歓楽街として「見世物小屋」等々が立ち並びいわゆる「浅草六区」として栄えたところである。 1988年(昭和63年)、台東区立「下町風俗資料館」発行の「浅草六区興行史」(写真1)によれば大正6年1月には浅草オペラが「常盤座」で上演した「女軍出征」を皮切りに翌々年大正8年には熱狂的に全盛期を迎え道行く人たち全てが『恋は優しい野辺の花よ(ボッカチョ)』、『風の中の羽のように・・・(リゴレット)』などを口ずさんだそうである。
今回紹介するレコードは浅草大芸人として1982年には「第37回文化庁大衆芸能部門大賞」受賞に輝いた『坂野 比呂志』が昭和の昔、縁日などの露店で聴かれた懐かしい物売りの声、サーカスの呼びこみ、ガマの油売り等々の貴重な芸をレコーディングした「大道芸」と題するものである(写真2 坂野 比呂志/大道芸 LPジャケット- キングKHA 1007 1977年ステレオ録音)/ 写真3 同盤・レーベル面 / 写真4 LPジャケット裏面-収録内容)。 レコード解説にもあるように彼にしかできない至芸だったのである。 さらに案内役が現在「日本浪曲協会名誉顧問」の「二葉百合子」が務めているところもこれまた凄いことである。 まさに「浅草六区」がよみがえったレコードだった。 最後に余談になるが「1985年”つくば科学万博”」で「日本の大道芸」-「物売り口上」を実演していただいたことも懐かしく思いだされる。