私の落語・演芸レコード・コレクションから(10、完)
〜シンセサイザーとコラボした「講談」と「落語」〜
「私の落語・演芸レコード・コレクション」はひとまず今回のシンセサイザーと見事にコラボした「講談」と「落語」の珍盤で締めたいと思う。
先ず「講談」は七代目「一龍齋貞山」(1907~1966)が大変得意とした怪談噺、「四谷怪談」と三遊亭圓朝作「真景累ヶ淵–宗悦殺し」のTBSラジオ放送音源を使用しシンセサイザーの効果音を見事にドッキングさせた1枚である。 講談師七代目「貞山」は筆者が高校時代の昭和41年に亡くなっているので残念ながら彼の実演は聴けなかった。 このレコードは昭和39年8月17日にラジオ放送された「貞山」の口演「四谷怪談」の発端「お岩の誕生」を別録のシンセサイザー効果音にミックスさせている。 これにより一段と不気味さが聴き手に伝わってくる。 レコード裏面に収録された「真景累ヶ淵」を講談にかけることは珍しい。 因みにこちらの音源は「貞山」の存命中には放送されず彼が亡くなった直後に「貞山を偲んで」放送されたそうである。 また「シンセサイザー制作」は「Bach Revolution」となっている(写真1 七代目一龍齋貞山「怪談噺-“四谷怪談”・”真景累ヶ淵-宗悦殺し”」CBSソニー22AH 543(1978年リリース) /写真2 「四谷怪談」を口演する七代目「貞山」―インターネット画像から)。
続いて「SF寄席」と題する「落語」と「シンセサイザー」のコラボは1979年にリリースされた。口演と脚色は「桂米丸」師が担当、落語の原作は「星 新一」、シンセサイザー音楽は「深町純」が担当している。当時の世の中は「インベーダー・ゲーム」が流行り映画「未知との遭遇」や「スター・ウォーズ」が大当たり、まさに時代にマッチしたレコードだった。米丸師の出囃子「金毘羅舟々」もシンセサイザーである。第一面に収録された「賢明な女性たち(宇宙戦争)」は女性たちが「UFO」に攫われていくという実にファンタジックな作品、昭和54年(1979年)の正月に「FM東京」で放送されている。裏面の「りんご」は睡眠と夢をテーマにした作品で少々地味なストーリーだが聴き手はシンセサイザー音楽に夢をふくらませながら鑑賞するのもいいだろう(写真3 「SF寄席」“賢明な女性たち”(宇宙戦争)/”りんご”(口演桂米丸) (東芝EMI TP-72317)/ 写真4 同盤ジャケット裏面)。 なお、米丸師も「つくば科学万博―EXPO寄席」に出演頂いている。 現在94歳、落語界の現役最長老である。 師は観客の笑顔を見ることが楽しみでそれがまた健康の秘訣だそうだ。 いつまでもお元気で活躍を続けていただきたい(写真5 「つくば科学万博」/ ”EXPO寄席”で口演する「米丸師」1985年8月4日EXPOホール、博覧会協会撮影)。
(完)