米EMI-Capitol、FDS録音シリーズから

今回は「漫遊記305 –戦後、日本唯一のLPレコード専門誌 ”プレイ・バック”」で紹介した「バイノーラル(Binaural)録音」音源からCD化された「FULL DIMENSIONAL SOUND(FDS米EMI Classics)シリーズ」にスポットを当ててみたい(写真1 1997年デジタル・リマスターCD化されたラインナップ)。 この時代、オリジナル・ステレオ録音が確立される過渡期のレコード会社は「ハイ・フィデリティ録音(Hi-Fi録音)」の探究に力を入れていた。 とりわけ、アメリカのEMI-Capitol」のこの「FDSシリーズ」は「デッカ」の「FFRR(Full-Frequency Range Recording)」と並び早くから開発が進めれた当時の立体再生録音であった。 今回はこのシリーズ「FDS(立体録音)」オリジナル・マスターテープからデジタル・リマスターされたCD3枚を選び取り上げてみたい。
先ず、写真2はピッツバーグ交響楽団音楽監時代のウィリアム・スタインバーグ(William Steinberg)が1953年2月にセッション録音したマーラー「交響曲第1番」と前年1952年11月に開催された「第1回ピッツバーグ現代音楽祭」でのライヴ録音、エルネスト・ブロッホ「コンチェルト・グロッソ第1番」が収録された1枚である。 ピアノはハリー・フランクリン(米EMI Classics-7243 5 66555 2 2)。
写真3はウラディミール・ゴルシュマン(Vladimir Golschmann)&セント・ルイス交響楽団とのセッション、フランク「交響曲ニ短調」(1953年2月録音)・ショスタコーヴィチ「交響曲第5番」(1953年12月録音)のカップリングである(米EMI Classics-7243 5 66557 2 0) 。
写真4はウィリアム・スタインバーグ&ピッツバーグ交響楽団によるセッション、ブルックナー「交響曲第4番”ロマンティック”」(1956年4月録音)とリヒャルト・シュトラウス交響詩「死と変容」(1954年1月録音)の組み合わせである(米EMI Classics-7243 5 66556 2 1)。

いずれもモノラル録音であるがダイナミック・レンジが広くノイズもほとんどなく録音バランスが大変素晴らしい。 今聴き直してもとても1950年代録音とはとても想像し難い。 もちろん演奏も見事なのだがCDジャケット左上にある「FDS」のロゴマークを入れるためには当時相当厳しい社の基準審査があったそうである。

写真1    1997年当時デジタル・リマスター化されたCDラインナップ

写真2    W.スタインバーグ&ピッツバーグ響 / マーラー交響曲第1番 / ブロッホ「コンチェルト・グロッソ第1番」

写真3    V.ゴルシュマン&セント・ルイス響 / フランク交響曲ニ短調 / ショスタコーヴィチ交響曲第5番

写真4    W.スタインバーグ&ピッツバーグ響 / ブルックナー交響曲第4番 / R.シュトラウス「死と変容」