長時間収録クラシックLPレコードについて(2)

その昔、ベートーヴェン「第9」の1枚ものレコードで気になっていたことは「第3楽章」が裏面にまたがることだった。 当時基本的にLPレコード一面の収録時間は長くておよそ30分前後が一般的だったのでこの問題は致し方ないと思っていた。 ところが1960年代半過ぎちょうどカラヤン&ベルリン・フィル2度目の来日公演を行った1966年頃だったと思うがカラヤンが「フィルハーモニア管弦楽団」と1955年に録音したLPを求めたところ「第3楽章」「第4楽章」がレコード第2面にまとめて収められておりビックリさせれたことを覚えている。 しかも第1面には「エグモント序曲」のおまけが最初に収められ「第1楽章」「第2楽章」へと続く(写真1  カラヤン&フィルハーモニア管弦楽団ほかベートーヴェン「第9」LPジャケット/AA7382東芝音楽工業)。 因みに演奏時間は「エグモント」(8分21秒)「第1楽章」(14分58秒)「第2楽章」(10分03秒) 第1面合計33分22秒、「第3楽章」(16分01秒) 「第4楽章」(24分07秒)第2面合計40分08秒でトータル73分31秒となる。 この当時国内盤1枚ものの「第9」で「第3楽章」が裏面にまたがらず聴けたLPはこのほかにはなかったのではないかと思われる。 またこのLPは「東芝音工」が開発した「エバークリーン・レコード」で「赤盤」とも呼ばれ埃がつきにくいことが売りだった(写真2  同LP赤盤-レーベル面)。 また余談ではあるがこのLPはモノラル音源を電気的にステレオ化したいわゆる「擬似ステレオ盤」だが当時実験的にステレオ録音でも行われており「ワーナー・クラシックス」より「オリジナル・ステレオ・テープ」から2015年に初CD化されている。

次に外盤の1枚ものLPでは写真3のクリュイタンス&ベルリン・フィルによる「第9」(1957年ステレオ録音)が「第3楽章」が裏面にまたがらず鑑賞できる1枚である。 このLPは1988年に「ダイレクト・メタル・マスタリング」で発売された「独EMIエレクトローラ-023 7 69394 1」盤である。 第1面に「第1楽章」(18分08秒)「第2楽章」(11分28秒)、第2面に「第3楽章」(16分16秒)「第4楽章」(25分35秒)が収められている。 トータル演奏時間は71分27秒となる。

このほか1枚ものではないがちょっと珍しい1枚半に収録されたケンペ&ミュンヘン・フィルの「第9」を紹介しておきたい(写真4  ケンペ&ミュンヘ・ンフィル「第9」ジャケット/ 独EMIエレクトローラ-1C 145-02 761/62Q・1973年5月録音)。 収録は第1面「第1楽章」(16分16秒)「第2楽章」(11分14秒)、第2面「第3楽章」(16分09秒)、第3面「第4楽章」(23分51秒)、トータル演奏時間67分30秒で第4面はブランク・ディスクでドイツ語で「Bitte wenden, diese Seite ist nicht abspielbar(この面はかけられません。)とレーベル面に書かれている(写真5 LP第4面はブランク・ディスク)。 このLPは1977年秋「マイン川」と「ライン川」が合流する街、ドイツの「マインツ(Mainz)」のレコード店で筆者が求めた1枚である。当時ちょうどセール中でジャケット右上シールの価格9マルク80(日本円で約600円)と大変お買い得盤だった。 ケンペ&ミュンヘン・フィルの「ベートーヴェン交響曲全集録音」は1975年度の「日本レコード・アカデミー賞」を受賞している。

(つづく)

写真1    カラヤン&フィルハーモニア管 /「第9」LPジャケットAA-7382(東芝音工)

写真2     カラヤン&フィルハーモニア管 /「第9」LPレーベル面(赤盤)

写真3    クリュイタンス&ベルリン・フィル盤/「第9」ジャケット(独エレクトローラ盤)

写真4    ケンペ&ミュンヘン・フィル/「第9」ジャケット(独エレクトローラ盤)

写真5    ケンペ&ミュンヘン・フィル/「第9」盤の第4面はブランク・ディスク