驚きの超廉価盤CD  ”ARTE NOVA”シリーズ(2、完)

前回に引き続き超廉価盤CD ”ARTE NOVA” シリーズから筆者が個人的に注目した演奏から紹介したい。
まずアドリアン・リーパー指揮「グラン・カナリア・フィルハーモニー管弦楽団」によるベルリオーズ「幻想交響曲」(写真1  ARTE NOVA国内盤-BVCC-6036)、このオーケストラはスペイン領「グラン・カナリア島」の首都「ラス・パルマス(Las Palmas)」に本拠を置き日本にも2006年に来日公演を行っている。 指揮のアドリアン・リーパー(Adrian Leaper)は1953年生まれのイギリス出身、1994年から2000年までこの楽団の音楽監督を務めた人である。 演奏は全体的に少し遅めのテンポをとり第1楽章の提示部反復、第4楽章の前半の反復を実行するなど丁寧な指揮ぶりに興味を持った1枚である(1996年セッション録音)。
次にスウェーデンの作曲家「ベルヴァルド(Berwald)」の交響曲全集である。 彼の作品はスウェーデン本国ではあまり理解されなかったようで彼が遺した4つの交響曲も「第1番」を除き3つの作品は彼が存命中は演奏されなかった。 この「ダヴィッド・モントゴメリ―(David Montgomery)」指揮「イェナ・フィルハーモニー管弦楽団」による全集録音は当時廉価で入手できる全集盤としても魅力があった。 そのうえ録音・演奏も素晴らしい。 アメリカ出身の指揮者モントゴメリ―は新ウィーン楽派など現代音楽を得意とするフランスの「ルネ・レイボヴィッツ」にも学んだ人である(写真2  「ベルヴァルド交響曲全集(2CD)」、独ARETE NOVA-74321 37862 2 、1996年セッション録音)。
おしまいは抒情性に富んだ作品を書いたロシアの作曲家カリンニコフの「交響曲第1番ト短調」である。 この作品はかつて巨匠エフゲニー・スヴェトラーノフが「NHK交響楽団」定期で取り上げ日本のクラシック・ファンに広まった。 演奏は旧ソヴィエト出身のイスラエルの指揮者サミュエル・フリードマン(Samuel Freidmann)が「ロシア・フィルハーモニー管弦楽団」を振ったものである。 フリードマンの棒はじっくりとこの美しい作品を聴かせている(写真3  カリンニコフ交響曲第1番ほか/フリードマン指揮ロシア・フィル、 独ARTE NOVA-74321 65414 2、1996年モスクワ セッション録音)。 余白にはグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」から「舞踊音楽」と「スペイン序曲第1番”ホタ・アラゴネーサ”」が収録されている。 尚、このジャケット・カバーデザインにはドイツの画家「ヘルマン・エラー(Hermann Eller)」の絵画が用いられている。
(完)

写真1    ベルリオーズ「幻想交響曲」アドリアン・リーパー&グラン・カナリア・フィル(ARTE NOVA国内盤BVCC-6036)

写真2    ベルヴァルド「交響曲全集」ダヴィッド・モントゴメリー&イェナ・フィル(独ARTE NOVA-74321 37862 2、2CD)

写真3    カリンニコフ「交響曲第1番」ほか サミュエル フリードマン&ロシア・フィル (独ARTE NOVA 74321 65414 2)