TDKオリジナル・コンサート(FM東京)の想い出
TDKオリジナル・コンサート(FM東京)の想い出
~無料公開録音特別コンサート~
「FM東京」をキーステーションに全国の民放FM局で放送された「TDKオリジナル・コンサート」が始まったのは1971年11月のことである。この番組は1987年放送終了まで実に16年間続き我々「FMエア・チェック」ファンにとっても大変興味深い番組であった。筆者はカセット派ではなかったのでオープン・リールで注目したライヴ録音を録りまくっていた。当時エア・チェックしたお気に入りの内外クラシック・アーティスト達のライヴ録音は現在も大切に保存している。そんな中、番組独自の企画で日頃の番組愛聴者を抽選で無料招待する「特別コンサート」は人気の的だった。今回は筆者が運よく抽選に当たった記憶に残る2つのコンサートを中心に取り上げてみたいと思う。
先ずその一つが1972年の「カール・ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団」特別公演である。この室内オーケストラは指揮者ミュンヒンガーが戦後すぐ1945年に南ドイツの工業都市シュトゥットガルトに創設した室内楽団で初来日は1956年と早く、この1972年の来日は16年ぶりで2回目の来日となった。特別演奏会は5月26日午後6時半から東京(大門)の「郵便貯金ホール」で開催された(写真1 TDKオリジナルコンサート特別プログラム表紙(1972年)/写真2 特別公演チケット)。演奏プログラムはこの公演用に組まれた特別仕立ての構成だった。チェンバロに小林道夫が助演している(写真3 特別仕立ての演奏プログラム)。プログラムを見ておわかりいただけるように普段聴きなれた作品がズラリと並び会場の雰囲気も和やかだった。またミュンヒンガーはジャン・コクトー、マルク・シャガールに続きフランス政府からコートダジュール、マントン市の名誉市民の称号も得ていた(写真4 ジャン・コクトー(左)と共に・コクトーからミュンヒンガーに送られたイラスト画(右)(1958年/マントン)/写真5 マルク・シャガールからミュンヒンガーに送られたイラスト画(1959年)、以上1972年来日一般公演プログラムから)。
続いて「オリジナル・コンサート伝説のライヴ」として語り草になっている1974年6月30日東京文化会館で開催された「ノイマン&チェコ・フィル:スメタナ「わが祖国」全曲」の特別公演である。この無料公開コンサートにはなんと11万通の応募があったとのことで"ビックリ仰天”。もちろん筆者も応募したが当然抽選に外れてしまった。しかしその公演から40年近くか経過した2012年になってようやくCD化が実現した。まさに伝説のライヴである(写真6 伝説のライヴ・スメタナ「わが祖国」全曲CDジャケット/写真7 演奏データ・解説)。
最後は「TDKオリジナル・コンサート放送10周年記念」として1982年1月から2月にかけて開催された「ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団」初来日による「シベリウス交響曲チクルス特別公演」である(写真8 公演プログラム表紙/写真9 チクルス・演奏プログラム)。指揮は当時この楽団の首席指揮者を務めていたフィンランドの名匠オッコ・カムと日本のシベリウスの権威、渡邉暁雄が分担した。プログラム表紙(写真8)のカムのサインはこの4月(2018年)に新日本フィル客演の際に入れてもらったもので彼もこのプログラムをめくりながら当時を懐かしがっていたのが印象的であった。ちなみに当時私は1982年1月22日「東京厚生年金会館」の演奏をオッコ・カムの指揮で聴くことができた(写真10 シベリウス・チクルス東京公演チケット)。私はこの公演のおよそ2年前、1980年にシベリウス生誕の地を巡り改めて彼の魅力を肌で感じていた(漫遊記39)。まだこの当時日本でのシベリウス・シンフォニー連続演奏会は珍しく興味津々の方々も多かったのではないかと思われる。これらの演奏も2003年に「TDKコア」よりCD化されている(写真11 CDジャケットとカムに入れてもらったサイン/筆者が足を運んだ1982年1月22日演奏会シベリウス交響曲第3番・第6番)。