TBSラジオ「百万人の音楽」、1970
"記憶に残る公開放送録音コンサート”から
「TBSラジオ」のクラシック音楽放送番組「百万人の音楽」の放送開始は今から半世紀あまり前の1967年4月のことである。番組は毎週日曜日午後11時過ぎから55分枠で「サントリー」の提供で放送されていた。番組進行役に当時人気沸騰中の作曲家・指揮者の芥川也寸志、アシスタントはアナウンサー出身で女優の野際陽子、二人の息のあった軽妙洒脱なトークに魅力を誘った(写真1 「百万人の音楽」芥川也寸志と野際陽子/インターネットから)。また時には当時活躍中のゲストたちとの対話も興味深かかった。番組使用音源は「レコード」中心が多かったと思うが「公開放送録音コンサート」も少ないながら開催され筆者も何回か会場に足を運んだ。今日はその中から記憶に残る1970年に開催された「公開コンサート」を二つほど紹介したいと思う。
その一つ目が「プロコフィエフの夕べ」と題して行われた1970年5月13日の「第12回公開演奏会」、指揮と解説が芥川也寸志、お相手は野際陽子、演奏は「東京交響楽団」のメンバー、会場は「渋谷公会堂」である(写真2 プログラム表紙/写真3 演奏曲目・解説)。ロシアの作曲家「プロコフィエフ」の魅力を存分に味わってもらうことを趣旨に組まれたプログラムであった。「ピーターと狼」での野際陽子の語りもさることながら筆者はプログラム最後を飾ったプロコフィエフ最後の交響曲、「第7番嬰ハ短調」に注目した。当時この「第7番」の国内盤は「ロジェストヴェンスキー&モスクワ放送響」が唯一ではなかったかと思う(写真4)。もちろん生演奏に接したのはこの時初めてだったと記憶している。この演奏を聴きプロコフィエフの作品に関心を持ち始めたきっかけとなった。
二つ目は1970年11月17日の「第14回公開演奏会」である。会場は同じく「渋谷公会堂」。この公開コンサートは当時指揮者デビューを果たした新進指揮者「小林研一郎」と「堤俊作」の両名に加えてソリストに「山岡優子」(ピアノ)、ヴァイオリンには当時この「東京交響楽団」のコンサート・マスターを務めていた徳永二男を迎えての「協奏曲の夕べ」(写真5 プログラム表紙/写真6・7 演奏曲目・出演者紹介)。この公演では二人のフレッシュな指揮ぶりがとても新鮮で印象的だった。今年78歳の小林研一郎は「炎のコバケン」として国内はもちろんのことハンガリー、オランダを中心に世界で活躍中である。堤俊作はその後「東京交響楽団」の正指揮者を経て「東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団」を創設し常任指揮者として活躍、ヨーロッパでは各地の主要オーケストラの指揮台に立っていた。特にイタリアでは「オペラ指揮者」としても活躍中だった。しかし2013年9月、病のため66歳の若さで惜しまれながらこの世を去った。誠に残念である。
ところで人気を博した「百万人の音楽」は1989年4月、レギュラーの芥川也寸志、野際陽子から落語家「春風亭小朝」にバトン・タッチ。「小朝の百万人の音楽」という番組タイトルで継続されたが時代の波も受け翌年1990年9月末に23年あまりの歴史にその幕を下ろした。