「ヨゼフ・カイルベルト時代のN響」(1965-1968)
西ドイツ往年の名指揮者ヨゼフ・カイルベルト(Joseph Keilberth/1908-1968・写真1 第505回N響定期公演プログラムから)とNHK交響楽団の時代はおよそ2年半と短かったが多くのファンを魅了した指揮者だった。 初来日は1965年12月、「N響第9公演」を指揮、年をまたぎ1966年1月から2月初旬にかけての定期公演(第462回~第465回)に出演した。 残念ながら筆者はこれらの公演を生では聴けなかったがFMステレオ放送で聴いた記憶がある。 また当時「ステレオ放送」は「立体放送」と呼ばれ新聞のラジオ番組表には「立体」の「立」の字が頭に書かれていたことも懐かしい。 その後、彼は翌1967年1月にロヴロ・フォン・マタチッチ、ウォルフガング・サヴァリッシュと共に「N響名誉指揮者」に就任した。 そして1968年4月に再来日、第502回から第505回の定期公演を振り得意のベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー等々ドイツ、オーストリア系のプログラムに取り上げ名演を聴かせてくれた。 筆者も第505回定期公演2日目(5月22日/東京文化会館)に足を運びモーツアルト「交響曲第41番<ジュピター>」とブルックナー「交響曲第4番<ロマンティック>」を聴いた(写真2 第505回N響定期プログラム表紙/写真3 同、演奏曲目)。 筆者が生で聴いたこのコンサートでは特にブルックナーの飾り気のない素朴でガッチリした演奏がとても印象的だった。 彼はこの時自身が常任を務めるNHK招聘、「バンベルク交響楽団」の初来日ツアーも並行して指揮、こちらも大変話題になった。 しかし帰国後の1968年7月20日、「バイエルン国立歌劇場」で楽劇「トリスタンとイゾルデ」を指揮中に心臓発作で倒れ不帰の客となった。この訃報は衝撃だった。