「私の昭和歌謡レコード史」(12)
今回は1960年代末から1970年代前半のヒット曲からセレクトしてみたい。
先ずまさに「由紀さおり」の代表曲となった1969年にリリースされた「夜明けのスキャット」(山上路夫 作詞・いずみ たく 作曲)からスタートしたい。 聞くところによればこの曲のレコード化は当初なかったそうである。 当時の深夜ラジオ番組でのリスナーからの問い合わせが殺到、レコード化が急遽決まったというエピソードが残っている。 この曲の出だし第1番は歌詞のない「ル― ・ル―ルルル―・・・」の「スキャット」で歌われる当時の歌謡曲にはなかった斬新なスタイルだった。 初出盤シングル・ジャケット上部には「日本初のスキャット・ヒット!!」と書かれている。 もちろんレコード売り上げもたちまちミリオン・セラーとなった(写真1 「夜明けのスキャット」初出シングル・ジャケット 、東芝・エキスプレスEP-1136 / 写真2 同・レーベル面)。 またこのジャケットは見開き写真の縦長であった(写真3)。
次は「奥村ちよ」の1971年年末リリース「終着駅」(千家和也 作詞・浜 圭介 作曲)である。 彼女は当時「黛ジュン」「小川知子」と共に「東芝三人娘」とも呼ばれた。 この「終着駅」は彼女の従来のイメージとは一味違う「実力派」の「奥村チヨ」を見せつけた1枚だったと思う。 レコードは東芝の「赤盤」である(写真4 「終着駅」初出盤シングル・ジャケット 東芝 TP-2593 / 写真5 赤盤レーベル面)。
続いて1972年の「日本レコード大賞」受賞曲、「ちあきなおみ」の「喝采」(吉田 旺 作詞・中村泰士 作曲)である。 この曲は歌詞の内容が劇的であることからも「ドラマチック歌謡」とも呼ぶそうだが歌詞にある「黒いふちどり」など確かに聴き手には強烈なインパクトがあった(写真6 「喝采」初出盤シングル・ジャケット、コロムビアP-183 / 写真7 同・レーベル面)。さらに翌1973年リリースの「夜間飛行」も「吉田・中村」コンビによる「劇的歌謡」で曲間にフランス語によるキャビン・アテンダントのアナウンスも挿入されたお洒落な曲である。 またジャケットにはフランス語によるタイトル「LE VOL DE NUIT」の記載もある。このレコード発売当時、まだパリの「シャルル・ドゴール国際空港」は開業前だったのでアナウンスも「オルリー空港」になっているところが時代を感じさせた(写真8 「夜間飛行」初出シングル・ジャケット、コロムビアP-230 / 写真9 同・レーベル面)。
(つづく)