クラシック・オープン・リール・ソフト、日米間の相違
日本でクラシック音楽の「オープン・リール・ソフト・テープ」が市場に出始めた年は1965年ごろと記憶している。 それもレコード化された全てではなく厳選されたごく限られたものだった。 当時のハード機器もまだモノラル用のテープ・レコダーが主流でステレオ用の「テープ・デッキ」の種類はそれほど多くはなかった。 手元の1968年1月「電波科学」臨時増刊は「テープレコーダのすべて」とういう特集が組まれていた(写真1 「電波科学」1968年1月臨時増刊)。 筆者もこの雑誌を参考にしてアルバイトで貯めた資金でようやくソニーの4トラック・ステレオ・オープン・デッキを入手したことを思い出している。 因みに筆者が最初に購入したクラシックのオープン・リール・ソフトは当時「日本ビクター」から発売されていたカラヤン指揮ウィーン・フィルによるブラームス「交響曲第1番」(1959年録音)だった(写真2 カラヤン&ウィーン・フィル-「ブラームス交響曲第1番」-国内初出ステレオ・オープン・テープ-日本ビクターSTC-2034)/(写真3 オープン・テープ・レーベル面)。 仕様は7号テープ19cm/s 4トラック2チャンネル・ステレオである。 はじめて耳にしたレコーディッド・テープの音は通常のレコードにおける内周の歪を気にする必要がなくなったことである。 また、はるかにステレオ・チャンネル・セパレーションも優れていることだった。 そんなことから筆者も一時的だがオープン・テープに夢中になったことがある。 1970年代にロスアンゼルスのレコード店を訪れた際、クラシックの「オープン・テープ・ソフト」を見つけ求めたのが写真の「米Angel」のカラヤン&フィルハーモニア管弦楽団シベリウス「交響曲第2番」(1960年ステレオ録音)「交響曲第5番」(1959年ステレオ録音)・交響詩「フィンランディア」(1960年ステレオ録音)とマリア・カラスのプッチーニ歌劇「トスカ」全曲(ジョルジュ・プレートル指揮パリ音楽院管弦樂団ほか1964年ステレオ録音)だった。 もちろんテープはどちらも7号テープだがテープ・スピードは通常の19cm/s ではなくハーフ・スピードの9.5cm/s 仕様になっていたところに驚いた。 米国のオープン・テープ・ソフトは1950年代末ごろには市場に出ていたと云われているがハーフ・スピード仕様はダイナミック・レンジは物理的に幾分狭くなることは当然だが音質は聴いてみるとそれほどには気にならなかった。 このあたりは合理性を重視したいかにもアメリカらしかった(写真4 カラヤン&フィルハーモニア管・シベリウス交響曲第2番ほか「米Angel」4トラック・テープ Y2S 3682 9.5cm/s / 写真5 同、テープ・レーベル面 / 写真6 「マリア・カラスの「トスカ」-「米Angel」4トラック・テープ Y2S 3655 9.5cm/s / 写真7 同、テープ・レーベル面)。