ジャック・イベール自作自演盤 「寄港地」
今回はフランス印象主義、新古典主義を見事に融合した粋な作風で知られるジャック・イベール(Jacques Ibert/1890~1962-写真1)の貴重な自作自演盤を紹介したいと思う。 LPタイトルは「二つの寄港地」である。 これはイベールが「第一次世界大戦」の海軍士官時代、地中海を航海中に寄港した地の印象を綴った「3つの交響的絵画”寄港地”( Escales -Trois Tableaux Symphonique)」の自作自演1950年代モノラル録音とジャン・マルティノン&フランス国立管弦楽団による1974年録音ステレオ録音を収めた興味をそそる2LPアルバムだった (写真2 LPジャケット、東芝EMI-EAC 47129~301978年リリース/写真3 LPレーベル面)。 いずれもオリジナルは「仏パテ音源」と思うがこのイベール自作自演の国内盤は初出だったと思う。 イベールの演奏はパリ国立歌劇場管弦楽団を指揮したものでカップリングされた舞踊音楽ジュピター(ユピテル)の愛(Les amours de Jupiter)も珍しい録音だった。 いずれも録音年月データ記載はないが1950年代半ば頃のものではないかと推測している。 一方、マルティノン&フランス国立管弦楽団による演奏は名盤としての定評が高い演奏だがこのほか世界初レコード録音となった二つの作品、日本建国2600年祝典のために書かれた「祝典序曲」とイベール事実上の最後の交響的作品にもなった「架空の愛へのトロピスム」(1957)が収録されている。 ちなみにトロピスム(Tropisme)をフランス語の辞書で調べたところ生物が太陽の方向に向く「向日性」のことだそうだ。