岩城宏之&都響で"武満プログラム”を聴く、1978
~ 第106回都響定期公演、1978年4月19日、東京文化会館 ~
日本を代表する現代音楽作曲家「武満徹」も筆者がよく好んで聴く日本人作曲家のひとりである。今回紹介する1978年4月19日東京文化会館での「第106回東京都交響楽団定期公演」は岩城宏之指揮によるオール武満徹作品によるコンサートであった(写真1 都響第106回定期公演プログラム/武満徹直筆サイン/写真2 コンサート・チケット)。このコンサートでは写真のプログラムの通り1966年から1977年にかけて作曲された武満作品が演奏された。
最初に演奏された「地平線のドーリア(1966)」は二群の弦楽合奏のための演奏時間10分弱の小品だが繊細な弦の響きが印象に残る。次の「ウィンター(1971)」は1972年の「札幌冬季オリンピック」委嘱作品、ティンパニーの上に置かれた「磬(きん)」(読経の際に打ち鳴らす仏具)の響きで静かに終わる余韻が何とも言えなかった。休憩前に演奏された「アステリズム(1968)」では高橋アキのピアノ独奏が入る「ピアノ協奏曲」作品である。「アステリズム」はプログラムの解説によれば星に関連した言葉とのことである。先の「ウィンター」が静的作品とするならこちらはエネルギッシュな「動的」作品とも云えるだろうか? 特にコーダに向かう管弦楽の強烈な響きとは対照的にピアノの静寂な響きが印象的であった。
プログラム後半は武満を代表する作品「ノヴェンバー・ステップス(1967)」から始まった。この作品は今や世界中のオーケストラ指揮者たちにより演奏され独奏者の鶴田錦史(琵琶)と横山勝也(尺八)もどれだけ世界を飛び回ったことだろうか。因みにこの作品の外国人指揮者による世界初録音は1969年12月録音のベルナルト・ハイティンク指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団だった(写真3 ハイティンク指揮世界初録音LPレコード国内盤)。この録音には作曲者の武満氏も現地で立ち会ったそうだがレコーディング・セッションはコンサート当日の午後ゲネラル・プローベの状態で行われたとのことである(写真4 録音会場/アムステルダム・コンセルトヘボウ、1973年3月筆者撮影)。プログラム最後は1977年に作曲された管弦楽作品「鳥は星の庭へ降りる」であった。筆者はもちろんこの時初めてこの作品の生演奏を聴いたが 第一印象は鉄筋、チェレスタの神秘的な響きであった。この作品はさらに1998年5月サイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団来日公演でも耳にしこの作品の弦楽器が持つ和声的な響きにも再認識した次第である。