新国立劇場でベルクの歌劇「ルル」を観る、2005
シュテファン・アントン・レック指揮 & 東響
ルル:佐藤しのぶ、シェーン/ジャック:クラウディオ・オッテリ
〜2005年2月17日、新国立劇場(東京・初台)にて〜
筆者は学生時代から「新ウィーン楽派」と呼ばれるシェーンベルク、ウェーベルン、ベルクの音楽に関心を持ち始めた。「新ウィーン楽派」の真骨頂でもある無調音楽、十二音技法の世界を確立し当時の前衛音楽最先端をいくベルクの作品は抒情性も感じ筆者ものめり込んだ。とりわけ彼の未完のオペラ「ルル」は全ての人間が持つ性の問題を背徳の女「ルル」を通じて描いた興味深い作品である。残念ながら彼は敗血症のため1935年に亡くなったため「第3幕」が未完で終わっている。ただ幸いにして「第3幕」の終結部分が「ルル組曲」としてベルク自身が作曲しており「クリストフ・フォン・ドホナーニ&ウィーン・フィル、アニア・シリア(ルル)」の1976年録音も「2幕版」によるものだがラストにこの「ルル組曲」からの二つの楽章が収録されている(写真1 ドホナーニ指揮ウィーン・フィル アニア・シリア(ルル)3LP DECCA録音)。
さて少々マクラが長くなってしまったが本題の「新国立劇場」における歌劇「ルル」の公演は2005年2月8日・11日・14日・17日の4日間行われ筆者は最終日17日(マチネ公演)に足を運んだ。と云ってもチケットはほぼ完売の状況で最終日のこの公演チケットを何とか入手、チケットも当日会場でピックアップ、仮券に手書きというものだった(写真2 2/17公演チケット)。指揮はドイツの温泉地としても知られるバーデン=バーデン出身の当時45歳のシュテファン・アントン・レック(Stefan Anton Reck)、管弦楽は「東京交響楽団」タイトロールのルル役に人気絶頂の佐藤しのぶ(ソプラノ)、シェーン博士/切り裂きジャック役にはウィーン出身のクラウディオ・オッテリが客演した。指揮者のアントン・レック(写真3 アントン・レックのプロフィール・カード)は1985年の「第1回トスカニーニ国際指揮者コンクール」で優勝後話題となった人である。筆者は、彼がシチリア島パレルモの「マッシモ歌劇場」音楽監督時代にライヴ録音した「ルル」のCDを聴き注目した(写真4 シュテファン・アントン・レック&パレルモ劇場管の「ルル」2幕版「ルル組曲」からのエピローグ付き、アナト・エフラティ(ルル)2001年1月ライヴ録音CD/ジャケットに公演終了後アントン・レックに入れてもらったサイン)。
今回聴いた新国立劇場の「ルル」の上演は当初3幕版の予定であったそうだが最終的には「2幕版」に今や慣習的となった「ルル組曲」からエピローグを付しての上演となった。また「佐藤しのぶ」の「ルル」は凄みよりとてもチャーミングで魅惑的な「ルル」が印象的だった。
写真5は「ルル」公演新国立劇場公演プログラム表紙、写真6は「ルル」公演プログラム別紙-公演日程、写真7は「ルル」新国立劇場キャスト一覧、写真8は「ルル」公演終了後に入れてもらった「佐藤しのぶ」のサイン、写真9は「ルル」公演終了後に入れてもらったシェーン博士/切り裂きジャックを演じた「クラウディオ・オッテリ」のサイン、写真10は「ルル」公演終了後に「プロフィール・カード」の裏面に入れてもらったシュテファン・アントン・レックのサインである。