hatakesunのひとりごと(ハイレゾ音楽とアップスケーリング技術)
先輩が書いたレポートです。 ハイレゾを客観的に評価した素晴らしいレポートだと思いました。
音楽愛好家の皆様にも参考になると思いましたので共有致します。
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ハイレゾ音楽とアップスケーリング技術(2022-2-2 梅木信治)
ネット配信によるハイレゾ音楽が注目されているが、これを楽しむには一般に有料契約が必要であり、自分の 音響システムのレベルアップが不可欠になる。 音楽がデジタル化してCDが生まれ、インターネットで送受信 する目的で(25年ほど前に)情報量を数分の1に圧縮したMP3方式が出現した。 音質の劣化は実用上許容範囲内 との判断がなされて音楽産業は大きな転換期を迎えた。
物理的なメディアに代わって音楽ファイルが主流になり、いち早くビジネスに結び付けたApple は音楽ファイ ルのネット販売を開始した。 これでパソコンがあればインターネット経由で音楽を楽しめる時代になった。 動 画投稿サイトとしてスタートした YouTube は音楽の分野にも進出し、インターネットの性能向上をバックに ミュージシャンが自作した曲なども公開できる場を用意して活躍のチャンスを与えたり、人気のある曲などを 視聴できる環境を作り新しいビジネスにした(2006年、将来性に目をつけたGoogle に買収された)。
インターネットの性能向上は一旦妥協した音質の回復を可能にするレベルに達し、いわゆるハイレゾと称する High Resolution Music の出現を促した。 スタジオ録音や Live recording は最高級の設備で行うのでマスターテープは言うまでもなく最高品質だが、音楽業界の事情でギリギリのレベルまで下げてエンドユーザーを半ば騙す形でMP3方式を正当化したのは資本主義の金儲け主義が如実に現れた事例だ。
ハイレゾが復活したのは賛成だが、それを聴くにはお金がかかる。 金に糸目をつけないマニアは別として多くの音楽愛好家は最低限どうすればいいのか知りたくなる。 ハイレゾ音楽配信は基本的に有料だ。 月約2千円程度のサブスクが多い。 この程度の出費ならOKだと思う方は次に自分の音響システムに手を加える必要がある。 具体的にはハイレゾ対応のDACと呼ばれるアダプタを購入する必要がある。安い物でも1万円程度はする。 スピーカーやヘッドフォンもハイレゾ対応を薦める解説記事が多いようだが、今使っているものがそれなりに高品質であればとりあえずそのまま使ってみて様子を見た方がいい。
ここからがこの記事の本論になるのだが、音楽雑誌などを読んでもあまり触れていない。 音楽は電気信号に変 換されてデジタル処理されるのだが、周波数レンジとダイナミックレンジを圧縮したり、間引きすることで原音の基本を損なうことなく情報量を小さくすることができる。
この辺りの研究はSony が先行していて上の図で分かるように周波数(横軸)とダイナミックレンジ(縦軸)の関係から音質の位置付けを知ることができる。 MP3音質は高域の周波数ゾーンと小さい音のゾーンがカットされている。Sony はこれを復活させる技術を開発した。 アップスケーリングという言葉を使っている。 音の場合は数値だけでは実感できないので実際に聴いてみてその効果を確認することになる。 高齢になると高い周波数は 聞こえにくくなるので高域の音が改善される実感はあまりないようだが、低いレベルの音は実感でもクリアに 聞こえるようになる。 澄んだ音で聴こえ、音の消え際の伸び具合など引き込まれてしまう。 ハイレゾ配信が普及してもYouTube などで公開している動画の音声はMP3レベルなので一般にはハイレゾ対応のDACアダプタを接続しても音質が良くなる訳ではない。 つまりただハイレゾ対応とカタログに書いてあっても従来の音楽がアップスケーリングされる回路が入っているとは限らない。 このあたりの関連はややこしいので時系列的に私見を混じえて整理してみたい。
- 普通のパソコンの音声回路は音楽用ではないからこれで音楽を楽しむのは基本的に無理!
- デジタル信号をアナログ信号に変換するDAC(Digital to Analog Converter)回路の高性能化が必要!
- ハイレゾ化の話が出る前から音楽用に適したUSB接続のDACが開発されて市場に出回っていた。
- 一部の音楽愛好家はそれを購入して(2000円程度)パソコンに繋ぎ、それなりに高音質で聴いていた。
- パソコンに付いているスピーカーより外部スピーカーやヘッドフォンの方が音がいい。
- スマートフォンがポピュラーになり、これで音楽を聴くユーザーが増えてきた。
- Sonyがアップスケーリング機能の付いたハイレゾ対応のスマートフォン(Xperia 5 III)を発売中
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まだスマートフォンを持っていないか、機種変更を検討しているならこれがお薦め !!
9. 使用中のスマートフォンやパソコンをハイレゾ対応にするにはアップスケーリング付DACを買う!
10.具体的には、①:Spectra シリーズ(約25,000円)、②:Cayin RU6(約33,000円)、③:Earstudio ES100(約
11,000円)などの小型DACをお勧めする。
11.汎用性を考えるとCayin RU6 がベスト(https://www.fujiya-avic.co.jp/blog/detail/620)
12.Earstudio ES100 は Bluetooth レシーバーで有線接続のスピーカー、ヘッドフォンなど使用可能
オーディオの世界はまだ感性が優先していてアンプやス ピーカーなどの性能はカタログだけで判断するのは危 険、実際に試聴してみて判断してほしい。 はっきりして いるのはハイレゾ対応と書いてあってもアップスケーリ ング機能付と明示していないDACは避けた方がいい。
大手の音響メーカーはこのようなDACは扱わない。 2万 円前後のパーツを売ってもメリットがないからだ。 それを知らないユーザーは未だにMP3品質で我慢しているが、こんな馬鹿な話はない。 4Kテレビはインターネッ トも使えるのでYouTubeも繋がる。 ただ音はあまり良 くないのでEarStudio ES100経由で安い(1万円前後) バー・スピーカーにでも繋げば素晴らしい音になる。 本当は高いバー・スピーカーなど必要ないのに・・・
ハイレゾ音楽の配信はほぼ10年前に始まった。 IIJ (https:// www.iij.ad.jp/cam/ps01/)というインターネット関連企業があるが容量の大きな高速インターネット回線を用意して、Berlin Phil のコンサートのLive 配信を行ったと言う。 現在は PrimeSeat というアプリを経由してライブ、オンデ マンドのサービスを行なっている(Windows, Mac, iPhone, iPad)。 アプリは無料なのでダウンロードすれば配信されている音楽を視聴することができる。 ハイレゾ対応のDACが無くても普通の音質で視聴できるので試してみるとよい。 具体的にはベルリン・フィルのコンサートは有料契約が必要だが、無料のクラシック音楽配信もあるので気軽にアプ ローチできる。 ベルリン・フィル以外のコンサートは YouTube で視聴できるが、ベルリン・フィルはデジタルコ ンサートホールというのを用意していて有料契約が必要に なる。 YouTube で視聴できるのは一部を除いて2,3分のみ だ。
つまり、ベルリン・フィルは10年前からハイレゾ音源をク ラシックファン向けにオンライン配信を企画していてそれもライブ配信をテスト的にIIJ の協力を得て実施するなど最先端を走っていた。 現在は定期演奏会をライブ配信したり、過去のライブラリーをオンデマンドで配信するなどのサービスを行なっている。 サブスク料金は安くはないが、 世界中のファンが対象だから経営的にもメリットがあるのだと思われる。 このようにしてYouTube 離れを実現して独立運営に成功した。 YouTube にはコンサートの ごく一部(2,3分)を流して客寄せに使っている。
なお、ダウンロードはほぼ不可能で、短期間だけ契約してその間に好きな曲のみ選んで自分のライブラリーを作ることはできない。 YouTube も現在はダウンロード禁止で有料契約者のみYouTube のサーバーに自分のライブラリーを作ることができる。 これはOff Line でも使えるが、契約を解除すればそのライブラリーは消 滅する。 つまり、先行するサービス企業はサブスク契約を前提にしてユーザーの利便性を提供するスタイルに なってきている。 考えてみれば特に高齢者は自分が死ねば自分自身の財産は引き取り手がなければ廃棄されるだけなのでこのシステムを利用する方が賢いと言える。
筆者は80代半ばで、あと数年を効率よく楽しむ方法としてYouTube Premium Member契約をしているが、 クラシックからカラオケまで広範囲にライブラリーを作り、楽しんでいる。 病気で入院した場合にもインター ネット環境さえあれば iPad を持ち込むだけでエンジョイできる。
蛇足になるが、自分の端末にはデータ保存機能は必要なく、操作性を優先してiPad Pro を使っている。 最近は4KテレビでYouTube に繋ぎ、iPad で作ったライブラリーを呼び出して大画面で綺麗な映像を見ながらクラシック音楽などを楽しむことが多くなった。 テレビ画面上で音声検索機能を使えば音楽に限らず好き な情報を瞬時に呼び出すこともできるのでとても便利だ。
長々と余計なことも書いたが多少でも参考になれば幸いである。 最後までお読みいただきありがとうございました!