ウィルヘルム・ケンプ来日公演聴く、1970年
ベートーヴェン生誕200年記念公演、4月7日・9日、東京文化会館にて
ピアノの巨匠、ウィルヘルム・ケンプ(写真1)は1936年の初来日から来日回数も通算10回を数えたという大変な親日家であった。ちょうど来日5度目にあたる1970年は楽聖ベートーヴェンの生誕200年の年にもあたり数々の記念コンサートが開催された。ケンプ来日東京公演も3月21日から4月9日まで「ベートーヴェン・ソナタ&協奏曲チクルス」のプログラムが組まれ全32曲のソナタと全5曲の協奏曲が演奏された(写真2 1970年ケンプ来日公演プログラム表紙/写真3-来日公演日程)。筆者はチクルスのラストを飾る4月7日と9日に開催された「協奏曲チクルス」(会場/東京文化会館)に足を運んだ(写真4 協奏曲チクルス・プログラム)。 指揮は森正(写真 5)、管弦楽はNHK交響楽団である。中1日を置いて2日に渡るチクルスはどれも素晴らしい演奏だったが特に「第3番」はケンプの淡々した演奏のなかに何か奥深い味わいを感じたことを覚えている。またカデンツァも基本的にケンプ自身のオリジナルを弾いていたのが興味深かった。さらに森正の端正な指揮ぶりも印象に残る。これらの貴重なライヴ演奏は「N響85周年記念シリーズ」としてNHK放送音源から昨年「キングインターナショナル」からCD化もされている(写真6 ケンプ&N響ベートーヴェン「ピアノ協奏曲全集」CDジャケット1970年ライヴ)。