ヴァイルのオペラ「マハゴニー市の興亡」を観る
チューリッヒ・オペラハウス、1976
クルト・ヴァイルのオペラ「マハゴニー市の興亡」を観る- 1976年2月、チューリッヒにて-
私は1976年2月末、再びチューリッヒのオペラ・ハウスを訪れた(写真1 筆者撮影、1976年2月)。オペラの演目はクルト・ヴァイル(Kurt Weill)の「マハゴニー市の興亡」である(写真2 プログラム表紙)。クルト・ヴァイル(1900~1950)(写真3)は新即物主義的な音楽作品でよく知られたドイツの作曲家である。またベルトルト・ブレヒト(劇作家)と組んで発表した「三文オペラ」は当時大変人気を呼んだ。私が今回生で初めて見た「マハゴニー市の興亡(Aufstieg und Fall der Stadt Mahagonny)」は1930年代のお金が全てという北米の架空都市「マハゴニー」を舞台にいわゆる資本主義社会の功罪をあばいた作品である。全3幕で上演時間約2時間半弱(休憩含まず)を要するが舞台には本物のクラシック・カーが飛び込んで来たり巧妙で大掛かりな演出が興味深く満員の聴衆を飽きさせなかった。演出はハリー・バックウィッツ(Harry Buckwitz)(写真4)、彼はミュンヘン出身のベテランのオペラ演出家、当時この「チューリッヒ歌劇場」で演出総監督を務めていたようだ。舞台芸術監督はイタリアの著名アート・ディレクター、エジオ・フリジェリオ(Ezio Frigerio)があたっていた(写真5)。指揮はクラウスペーター・ザイベル(Klauspeter Seibel) (写真6)。彼はこの当時「フランクフルト歌劇場」の音楽総監督を務めていた人である。また歌手陣では未亡人で指名手配中の逃亡者レオカージャ・ベグビック役、アストリッド・ヴァルナイ(ソプラノ)(写真7)が印象的だった。彼女はスウェーデン・ストックホルム出身のベテラン歌手でワーグナーも得意とし1951年「バイロイト音楽祭」ではハンス・クナッパーツブッシュの指揮でブリュンヒルデを歌っている(写真8、9 内表紙とキャスト一覧)。写真10は当日のチケットである。