フランクフルト放送響を聴く
「フランクフルト放送響を聴く」-1976年3月・フランクフルトにて-
パリで「マルティノン追悼コンサート」を聴いた翌日、私はフランクフルトに飛んだ。私はこれまでFM放送では耳にしていたがついに初めて「フランクフルト放送交響楽団」の演奏を生で聴くことになる。早速ホテルで現地のイベント情報誌「Frankfurter Wochenschau」を入手、(写真1)ページをめくると「11.3.Donnerstags-Konzert des Hessischen Rundfunks・・・Dirigent Dean Dixon」の文字が目に留まる。「何?これ?ディーン・ディクソンが振るの?!」とビックリ(写真2)。指揮者のディーン・ディクソンは過去にNHKFMで同楽団との演奏でスクリャービンの「交響曲第2番”悪魔的な詩“」を聴き当時1度聴いてみたい指揮者の一人だった。これは私にとって願ったり叶ったりだった。会場はホテルの前から市電に乗り約15分ぐらいのとろに位置するドルンブッシュ(Dornbusch)の「ヘッセン放送協会大ホール」、コンサートは午後8時開始。例によって私はそわそわウキウキしながら開演の約1時間前に会場に着く。市電の停留所「ドルンブッシュ」はドイツ語で「いばらの薮」を意味するらしい。その名の通りコンサートホールは緑に囲まれた閑静な地域に位置しヘッセン放送局ビルに附設されていた。会場でプログラム(写真3)を見ると指揮者がポーランドの名指揮者で作曲家でもあるヤン・クレンツ(写真4)に代わっていた。今回注目したディーン・ディクソンが聴けなかったのはチョット残念だったがクレンツは現代音楽も得意とする指揮者なので逆に期待感も高まっていった。プログラムはバーバーの「弦楽のためのアダージョ」、マクダウェルのピアノ協奏曲第2番とアメリカの作曲家の作品が続き休憩後にブラームス交響曲第1番が演奏された。 協奏曲のソリストにはアメリカ出身で当時新進気鋭のピアニスト、ジェームス・トッコ(写真5)が客演した。クレンツの指揮はバーバーをしっとりと趣きたっぷりに演奏、そしてマクダウェルのロマンティシズム溢れる協奏曲ではトッコのテクニックが光った。メインのブラームス交響曲第1番ではクレンツは第1楽章の提示部の反復も実行、重厚で緻密な指揮ぶりがとても印象的だった。またこのホールの響きの素晴らしさも付け加えておきたい。写真6は当日のコンサートチケット。