寄席〜“紙切りリクエスト” 〜 オーケストラの指揮者
「寄席」の色物(いろもの)の一つに「紙切り」がある。 つまり紙をお囃子にのってハサミで切りある形を作っていく伝統芸である。そのテーマはジャンルを問わず多岐に渡り興味深い。 また演者も紙切りの最中も客を飽きさせることなく軽妙なトークや仕草(しぐさ)で会場の笑いを誘う。 そんなわけでこの種の芸は観客のリクエストに応えて難題も具体的な形にしてしまうところが凄い。 今回は現在の紙切りの第一人者三代目「林家正楽」師匠が「一楽(いちらく)」から「小正楽(こ
しょうらく)」に襲名した時代(1988年)の頃の話である。
「上野・鈴本演芸場」夜席でいつものように「小正楽」師から「それでは次からはお客様のご注文を頂いて・・・」と声がかかると高座の真下最前列「かぶりつき」に陣取った
筆者は大声で「オーケストラの指揮者」と叫ぶと早速リクエストに応えて「オーケストラの指揮者ですか(?!)」と「カラヤンか小澤征爾か」とつぶやきながらお囃子にのってわずか時間で切って頂いたのが写真の作品である(写真1)。 筆者自身は「アントン・ブルックナー」が指揮しているシルエットにも見え大切に保存している。 完成した作品は専用の厚紙の封筒も用意され記念のお土産として持ち帰ることができる(写真2 頂戴した作品を入れる専用封筒、当時)。