ロベルト・シューマン"クライスレリアーナ"、私のこれ1枚
ロベルト・シューマン(Robert Schumann/1810-1856)、ピアノ作品の傑作のひとつクライスレリアーナ作品16は彼がクララと結ばれる前の1838年に作曲した8曲から構成されるピアノ幻想曲集でショパンに献呈されている。 タイトルのクライスレリアーナ(Kreisleriana)はドイツの幻想文学の奇才とも云われる音楽(評論)、作曲、画家、法律家等々多彩な才能を持つE.T.A.ホフマン(Ernst Theodor Amadeus Hoffmann/1776-1822)、同名の音楽評論集から引用されシューマンはこの作品に霊感を持ち作曲した。 またシューマン自身は作曲にあたりこの書の登場人物クライスラー楽長(ホフマン自身)を自分自身、当時恋人のクララに重ね合わせたと伝えられている。 これまで数々の名盤が録音されているが筆者個人的によく針をおろす1枚は旧東独ルターシュタット・ヴィッテンブルク(Lutherstadt Wittenberg)出身の名ピアニスト、アンネローゼ・シュミット(Annerose Schmidt)女史が1970年代に「エテルナ」レーベルに録音したレコードである(写真1 国内盤初出盤(1975)ジャケット、徳間音楽工業ET-3030)。 この演奏に耳を傾けると決して派手さはないが彼女がこの作品に向き合う真摯で繊細にして優美な演奏スタイルが目に浮かんでくる。 レコード第2面に収録されたほぼ同時期に作曲された「ウィーンの謝肉祭の道化-幻想的情景」作品26も当初はロマン的ソナタとして考えられたそうだが異なる雰囲気を持つ5つの楽章をまさしく幻想絵画的に表現している。 このレコードが日本で発売された翌1976年11月には彼女は「読売日響第125回定期」に出演、筆者も会場の東京文化会館へ足を運びブラームス「ピアノ協奏曲第2番」をテオドール・グシュルバウアーの指揮で聴いた(写真2 読売日響第125回定期プログラム表紙/ 写真3 当日の演奏プログラム)。 写真4は当日のコンサート終了後、彼女に「クライスレリアーナ」レコード・ジャケット裏面に入れてもらったサイン、写真5はプログラムに入れてもらったテオドール・グシュルバウアーのサインである。