関西のホールとオーケストラ ③ ―ザ・シンフォニーホール―

ザ・シンフォニーホールは全国的にも有名なホールです。 HPにはカラヤンも絶賛した、との記載があります。 残響2秒をコンセプトに、1982年に日本でおそらく初のクラシックコンサート専用ホールとして開場しました。 サントリーホールより先んじること4年。関西財界の意気を感じるものがあります。 朝日放送が設立し、現在は独立法人で運営しているようです。 座席数は1,704席ですが、かなり小ぶりな印象があります。初めて行った際は「こんなに小さいのか」と思いました。 響きには定評があり、どの客席でも満足感があると思いますが、座席により印象は結構異なるとは思います。 私は1階正面、ステージに向かって右奥サイド、パイプオルガン下、ステージ後方左、他様々な座席で聴きました。 個人的な好みもありますが、ステージの近くのサイドが臨場感があって好きです。 ホールの容積が比較的小さいこともあり、マーラーのような大編成の曲は音が飽和するのではないか、と思います。 私自身はブラームス、Rシュトラウス(ドン・キホーテ)等を聴きましたので、飽和するという感じは持ちませんでしたが。

最近では以下の演奏会に行きました。

‘22年12月3日 シュターツカペレ・ベルリン、ティーレマン指揮、ブラームス 交響曲第2番・第1番
‘23年11月24日  日本センチュリー交響楽団、秋山和慶指揮、ベートーヴェン 交響曲第4番、R.シュトラウス 「ドン・キホーテ」

シュターツカペレ・ベルリンは、バレンボイムの予定が病気でティーレマンに変更になった演奏会でした。 初めて聞きましたが少しくすんだ響きがホールによく合っていたように思います。 ドイツの伝統的オケはこういう音色なんだなあ、と思いました。 その直前にパリ管弦楽団(マケラ)も聴きましたので、やはり独・仏のオケの音色の違いは顕著にあるな、と改めて思った次第です。 ティーレマンも生で初めて聞きました。結構テンポを動かし、意外なところで減速したり煽ったりしていた演奏でした。 そういうタイプでないと思っていましたので(あまりCDで聴いていなかったので)、少し驚きました。 下の写真はその時のものです。 最近は演奏終了後スマホの写真を許可することもあり、この時は「OK」でした。

 

ザ・シンフォニーホールは大阪の4つのオケのうち、「日本センチュリー響」「関西フィル」「大阪響」の3つが定期公演で使っています。 私は日本センチュリー響しかいったことがなく、外山雄三氏の大阪響の演奏は聴かずじまいでした。悔やまれます。 大阪に4つオケがあるのは、オペラやバレエなどの演奏会が東京に比べて非常に少ない大阪という環境を考えると、かなり厳しい運営状況であるように思います。 大阪フィルは別格という感じですが、それでもコロナ時は非常に財政的に厳しかったようです。 日本センチュリー響は、かつては大阪センチュリー響といい、事実上の「大阪府立交響楽団」として運営されていました。 実力も評価されていたと思いますが、橋本徹府政下の財政改革で2011年に補助金打ち切りとなりました。 その際改称して日本センチュリー交響楽団、となっています。

秋山和慶氏が定期的に指揮しており、今回もアントニオ・メネセスがチェロ、ということもあり、聴きにいきました。1F正面の前方で、見やすい席でした。 アントニオ・メネセスは、カラヤン・ベルリンフィルの「ブラームス:二重協奏曲」のCDで、カラヤンとムターとメネセスが並んで写っているジャケット(眼鏡をかけた若者)の写真が強く印象にあります。 面影があるかな、と思っていましたが、出てきたのは「別人」の少し太った「おっさん」でした(当たりまえですね。録音から約40年)。 あまり弦のテクニックは判りませんが、素人耳にはそれほど「すごい」という感じはありませんでした。 むしろ、須田祥子氏というビオラの奏者(このオケの客演首席で東フィルの首席)が、かなりの熱演で光っていた、という印象です。
秋山和慶氏の指揮は、機会をなるべく逃さず聴いていますが、きちんと整いかつ、かなり熱を帯びた演奏をされる印象です。 22年にN響と京都に来たときも熱演でしたが、今回も充実した演奏でした。 なるべく長くご活躍いただきたいと思っております。 オケ自体は数度聴いていますが目立つ破綻などはなく、よいオケだと思います。 財政状態も決して良くないと思いますので、がんばってほしい、と感じます。

ザ・シンフォニーホールは、響きの良さは定評があり十分それが実感できるホールです。しかし弱点は交通の便です。JR福島駅(大阪環状線)から徒歩約10分かかります。 周りにもあまり静かに食事ができるところがありません(福島駅付近は居酒屋が多いです)。 大阪駅(梅田駅)からタクシーが一番スマートなのですが、いつも悩みます。 夏と冬はご注意ください。