kenのひとりごと(マゼールと読売日響のマーラー「復活」、ホルスト「惑星」)

クラシックを聴き始めた1980年代半ばから、ロリン・マゼールはカラヤンと並ぶ「世界最高峰の指揮者」という印象がありました。 マゼールがウィーン国立歌劇場の総監督に就任して、マゼールとウィーン・フィルの共演が多かったこと、ベルリン・フィルにも頻繁に客演していたことが要因だと思います(その後、カラヤン没後の後継問題でしばらくベルリン・フィルからは遠ざかることになるのですが‥)。 そのマゼールが1987年5月8日、9日に読売日本交響楽団に客演してマーラーの交響曲第2番「復活」を演奏することになりました。 その「世界最高峰の指揮者」の演奏を聴きたくて東京文化会館に向かいました。 このコンサートについては、カラヤニストさんが「ロリン・マゼール、”読売日響“初共演」でまとめられていますので、ぜひお読みください。
私が聴いたのは初日(8日)の特別演奏会。 2日目(9日)の定期公演の演奏会はCD化されていますが(写真1)、初日の演奏はより過激かつ緊張感と迫力に満ちていたように思います。 1階5列目で聴いた大指揮者による読売日響の大熱演は、当時高校1年の私には言葉を失うほどの衝撃で、夢のような時間でした。 そのあとウィーン・フィルとマゼールの「復活」のCD(写真2、1983年録音)を聴きましたが、ウィーン・フィルの弦の美しさに感心したものの、いま一つの印象でした。 なおマゼールとウィーン・フィルの衝撃的な演奏として、ストラヴィンスキーの「春の祭典」があります。 こちらはkakuchanさんが「ストラヴィンスキー:春の祭典 」でまとめられていますので、ぜひお読みください。 マゼールはその後、フィルハーモニア管弦楽団と「復活」を再録音(写真3、2011年)していますが、そこではマゼールの「復活」演奏の結論のような、洗練された、極めて美しい演奏が収められています。
マゼールと読売日響との共演はもう一度あり、1992年4月17日、18日に実現しています。 「マゼール・ネイチャーコンサート」と題されたオーチャードホールでのWWF(世界自然保護基金)支援チャリティーコンサート(写真4、5)です。 メインはホルストの組曲「惑星」Op.32でした。 この時もオーチャードホールに不慣れなはずの読売日響がホールを揺るがす轟音を奏でて、ホールの隅々にまで鋭い音の塊をぶつけました。 通常の読売日響のパフォーマンスをはるかにしのぐ演奏で、「火星」終結部のブラス最強奏が強烈なこと。 「復活」の演奏と同様、この時のティンパニも凄まじい音でした。 音量だけではなく、それぞれの楽器の音程やリズムが高い次元で揃わないと(しかも磨かれた音色で)出てこない音だと思いました。 CDで聴けるフランス国立管弦楽団との「惑星」の色彩感も見事ですが(写真6)、読響の演奏もそれぞれの「惑星」の光色を放っていました。 ここまでオーケストラを本気にさせて、音色まで自在に操れる指揮者は、当時、マゼールとデュトワくらいだったのではないでしょうか。 残念ながら読売日響との「惑星」はCD化されていません。 ちなみに前プロで演奏されたスメタナの「モルダウ」も、一滴の水が大河に発展する様をリアルに描く、緻密かつ壮大な演奏でした(ヴィオラの16分音符にあれほどの説得力を持たせる演奏も稀です)。 アンコールはお決まりの「ルスランとリュドミラ」序曲。
マゼールの演奏にはがっかりした経験もありますが、総じて聴きごたえがある演奏が多かった(とくにライブ)という印象があります。 好みが極端に分かれる指揮者だと思いますが、良し悪しを含めて、また触れてみたいと思います。

写真1    マゼール/読売日響のマーラー「復活」(読響アーカイブシリーズ1015/1016)

 

写真2    マゼール/ウィーン・フィルのマーラー「復活」(ソニークラシカルS2K 38 667)

 

写真3    マゼール/フィルハーモニア管のマーラー「復活」(signumCLASSICS SIGCD352)

 

写真4     マゼール/読売日響2度目の共演パンフレット

 

写真5     マゼール/読売日響2度目の共演チラシ

 

写真6     マゼール/フランス国立管のホルスト「惑星」(ソニークラシカル 22DC 5512)