NPO 法人化5周年記念特別講演会
〜 オーディオ評論家 藤岡誠 氏を迎えて 〜
日 時:2018年05月26日(土) 午後2時~午後4時30分
場 所:竜ヶ崎ショッピングセンター・リブラ2階「旧映画館」
講 師:藤岡 誠氏(オーディオ評論家/年間オーディオ銘機賞・審査委員長)
テーマ:「我がオーディオ人生を語る」
NPO 法人龍ヶ崎ゲヴァントハウス法人化5周年記念特別企画として著名なオーディオ評論家である 藤岡誠氏をお招きし、氏の50年以上に渡るそのオー ディオ人生を語っていただきました。そのウイットに富んだ講演は時に大爆笑を誘い大盛況の内に終了しました。(fumi)
オーディオは自分の感性、自分の感じる音楽を最も説得できるものを目指すべきである。オー ディオコンポーネンツはそのためにある。自分の音作りのために傾注すべきである。自分の好みを大切にするべき。これを忘れると泥沼に入り込む。やれ大型スピーカーでなければダメだとか。大出力アンプでなければダメだとか。そんなことより自分の聴感覚に説得力あるものこそ大切。 よそ様のためのオーディオではなく自分のためのオーディオであることを忘れないでほしい。その意味では決していい音など求めないことである。自分自身は好みの音でオーディオ機器の評論はできないことから持ち込まれる機器を評価するためにオーディオ装置の性質を暴露するものを別途用意して評価している。若い人の作る装置の音は「ドシン、バタ ン、チーン、コーン、カーン」と鳴らして驚かせる音作りをしている場合が多い。私はこのような音は嫌いだ。先ほど聴いたゲヴァントハウスの音は「大人の音」で非常に安心した。自分の音作りがなされている。低音がどうだ、中音がどうだ、高音がどうだ、だけで音作りをすべ きではない。ハーモニーを美しく再現できなくてはならない。
以下、先生持参の CD でオーディオ機器のチェ ック方法を指南いただく。
1. ハイドン:セレナード、弦楽四重奏曲(イタリ ア合奏団)
・バイオリンが硬質感なく美しいハーモニーが 表現されコントラバスのピチカートが歯切れよく
出なくてはダメ。
2. モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番K331の第3楽章をフォルテピアノで
・フォルテピアノはフレームが木製、現代ピアノは金属製で響がまったく 違う。フォ ルテピアノが
現代ピアノの様に聴こえるようではダメ。
3. ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」から「冬」をハンドベルで
・ハンドベルは音の波形をみても非常に複雑、スピード感、分解能のチェックに適して いる。
4. ベートーヴェン:「君を愛す」エリー・アーメリンク(Sop)で
・伴奏ピアノが声と独立して聴こえること、歌手の後ろでピアノが演奏されている音場が
感じられること。
5. キャロル・キッド(女性ジャズシンガー)で When i Dream
・歌い手の息継ぎ、子音が強調されることなく自然に再現されること
6. シューベルト「冬の旅」から「おやすみ」をデートリッヒ・ヘンシェル(Bar)で
・声とピアノの分離がよく再生され空気感を醸し出せること。
7. カウント・ベーシー・オーケストラでC.B.Express
・クラシックに調整されている装置なのでジャズには物足りない音に思える。非常に品が
いい音を出す装置といえる。
8. J.S.バッハ、無伴奏バイオリン・ソナタ第1番の第4楽章から:ギドン・クレーメル
・クレーメルの凄さが伝わる名演奏かつ優秀録音。
9. グルックの「精霊の踊り」を宮澤明子(Pf)で
・収録場所は杉並の「風のホール」。ホール録音で奥行き、広がりを感じさせるよい録音
なのでその音場が再現されるかのチェックに使える。
Q&A コーナー
Q:今後おもしろいオーディオはあるか
A:5 年以上前の中古品が面白いのではないか。今では手に入らない良い部品が使われていた。
ただし、故障しても部品が手に入らないリスクはある。 CD/SACD プレーヤーも今は良い
ドライブメカ がなくなって来ている。一方、最新のクラス D のアンプの音はかなり良く
なってきているので先入観なく聴いてみてほしい。
Q:最近スーパーツィーターを付けたが測定器では出ているのに自分の耳では聴こえないが
どうしたらよいか。
A:周波数特性を気にしながら音楽を聴くのをやめましょう。音楽に集中すべき。耳の為にも
音ではなく音楽に集中して聴きましょう。そすれば耳の感度もよくなります。
Q:中古オーディオが狙い目とのことですがどんな製品が推薦できるか
A:半導体アンプでは当時で 50〜60 万円程度のものだと拘った良い部品を使っている。
一方、真空管アンプはおすすめ。出力トランスよりカップリングコンデンサーによる音の
変化が非常に大きい。半田付けができるなら楽しめるやり方。決め付けずに試してほ しい。
<藤岡 誠氏・略歴> 1944年東京生まれ。日本大学・芸術学部卒。大学在学中からオーディオ誌への執筆をはじめる。低周波から高周波まで、管球アンプからデジタルまで熟知。海外のオーディオショウにも毎年足を運ぶ。歯に衣を着せず、見識あふれる評論は多くのファンに支持されている。2011年から年間オーディ銘機賞・審査委員長に就任。現在に至る。