2016年春の特別企画 講演とCDコンサート

「カラヤンが認めた日本グラモフォンサウンド- その制作現場とレコード -」

日 時:2016年03月05日(土) 午後2時 - 午後4時30分
場 所:竜ヶ崎ショッピングセンター・リブラ 2階 「旧映画館」
講 師:乙黒正昭氏(元日本グラモフォン・プロデューサー)

 2016年最初の特別企画は、元日本グラモフォン・プロデューサーとして クラシック音楽産業黄金時代を築かれた立役者の一人であり、 “ミスター・グラモフォン”と呼ばれた乙黒正昭氏をお招きし 「カラヤンが認めた日本グラモフォンサウンド その制作現場とレコード」 と題して、講演とCDコンサートを行いました。
乙黒氏によると、カラヤンからは録音技術者も曲の「スコア」を勉強して 作曲家の意図を理解しないと優れたレコードはできない、との指導の下、 「スコア」を随分勉強されたようです。 それ故かグラモフォンサウンドは悪戯に各楽器の分解能を上げることを 目指さず、コントラバス等の低音楽器群が後方でしっかりと音楽を支えてこそ メロディーを奏でる弦楽器や木管・金管楽器が生き、立体感のある音楽を 伝えることができる、低音域がしっかりしないと作曲家の意図が伝わらない、 と熱弁をふるわれました。 ベルリン・フィルの録音の変遷も当初イエス・キリスト教会からベルリン・ フィルハーモーニー(ホール)に録音場所が移った際には、低音域が十分に 響かず、随分とカラヤン自身苦労があったようです。 あるきっかけで床を上げれば響きが随分良くなることが分かり、今は随分 改善されたようです。 また、録音がアナログからデジタルに変遷する中で、低音の倍音感が 薄くなったとの指摘がありました。 スコアに書かれた音楽がよりよく響き渡るよう、日々尽されていた様子が 伝わるお話でした。
一方、ドイツ本国から送られてくるマスターテープによるレコード 制作では、電気的なイコライジングの修正等は国内では全く行わなかった とのお話がありました。 当時は輸入盤と国内盤の音の違いがとやかく言われた時代でしたが、 氏によると音の違いはレコードの材質が大きく影響しているとのことで、 材料の選別では苦労された様子でした。
今回は第3楽章の完璧な演奏で、この作品が好きになったという ベートーヴェンのエロイカ、「田園」のアナログ録音とデジタル録音の違い、 チャイコフスキーの後期3大交響曲の短期間での録音の変化など、カラヤン &ベルリンフィルの音の変遷について、使用したホール、ホールの改良、 録音機材の変遷によって音楽の伝わり方がいかに違うか、マエストロは 生演奏にかける情熱とはまた違った別の情熱を、再生音楽にも傾けていた 様子が伝わり感動的でした。 多くの方々にレコード(CD)制作現場のパッションが伝わり 「講演とCDコンサート」は終了しました。(fumi)

当日配布されたプログラム