2018年12月14日に佐久間氏は永眠されました。 謹んでご冥福をお祈り申しあげます。 そして独自の思想に基づいたアンプがこれからはもう聴けないのだと思うとまことに寂しく残念です。 この訪問は前年2018年の春の訪問の折のお話です。
新緑の山々の稜線が重なる風景を見ながら空いた道路をひた走ると房総半島の豊かな恵みが直に感じられる空気が流れて来るようです。 地元の人には失礼な言い方になるのをお許し頂きたいのですが、こんな田舎にオーディオ専門誌にも寄稿している「達人」の経営するレストランが本当に有るのだろうか思ってしまいます。 今から訊ねるのは農業の達人だとか魚釣りの達人だと言った方が遥かに現実味がありそうな気がして来ます。
しかし、本日訪問するのは、農業や漁業の達人では無く、千葉県館山市にあるレストラン「コンコルド」のシェフです。 と言えば『無線と実験』の読者なら知らない人はいない自作アンプの達人、佐久間駿氏を訪問するオーディオ探訪の旅だと皆さん方には直ぐ分かると思います。 同行するのはこちらもゲヴァントハウスのオーディオの名人 fumi氏とE氏、それにおまけでオーディオには素人の小生です。
事前に fumi氏からコンコルドはレストランなのでハンバーグランチを食べに行く事が目的で、アンプやシステムの事は訪問した時に佐久間氏の手が空いて運が良ければお話しを頂戴出来るくらいの気持ちで行きましょうと言われました。 おまけに定休日は月・火・金・祝日で遠方の方は事前に電話で開店しているかは「営業時間内に」確認くださいとの事でした。 開店時間の11時30分に確認の電話をしてから出掛けていてはランチには遅すぎるので開店していると信じて9時にゲヴァントハウスの会場のあるショッピングセンターを出発しました。 万が一お休みなら房総半島の旨い魚でも食べて帰りましょうと話がまとまりました。
道中の車中でE氏からコンコルドで使っているスピーカーにローサーがあると聞いてびっくりしました。 小生の乏しい知識でもローサーは大変に使いこなしの難しいスピーカーだと聞いていたからです。 いや第一にローサーなんて使っている人はいるのかと言うほど珍しいスピーカーだと思っていました。 そんな話を聞くと期待が高まります。 果たして達人佐久間氏のお話しを頂戴出来るだろうか、気難しい方だったどうしようと若干の不安を抱えながら一路館山に向かう一同でありました。
どうにか、レストラン「コンコルド」にたどり着いたのは丁度開店時間の11時半、どうやら開店はしている雰囲気でした。 駐車場はないので離れた所に停めて欲しいと事前の情報があったので、停める場所を聞きにレストランの扉を開け恐る恐る、声を掛けました。 丁度カウンターの向こうに佐久間氏がおり「家の車(audi)の前に停めて良いですよ」と言ってくれました。レストランの前に車を停めていよいよ真空管アンプの館に入場です。
いえ、入場する前に入口のドアの手前の右手にある物置の様な場所に何やら巨大なスピーカーの様なものが、そして真空管アンプが転がっていて、いきなり軽いジャブを浴びせられた新人ボクサーの様な気分です。
店内に足を踏み入れてガツンと一発アッパーカットをお見舞いされました。 店内右手は真空管アンプで埋められているではありませんか。 そして左手にはスピーカーと業務用オープンリールデッキ! えっ、ここはレストラン・・・平たく言えば飲食店・・・いや、カウンターの向こうの背後にも食器を入れたケースの下は真空管アンプがずらりと並べられています。 もしかしたらここで食事をするのではなく別棟があるのだろうかと店内を見渡してしまいました。(kazu)
つづく